大手だけではなく個人や中小企業でも使える

こうした画期的なビジネスアイデアは、どうして生まれたのだろうか?

ソラコム代表 玉川憲氏

鍵は、社長の玉川がAmazonクラウド、AWSの事業開発に携わっていた経験からのヒントだ。玉川は、東京大学工学系大学院機械情報工学科修了後、日本IBM基礎研究所にエンジニアとして就職、2006年にカーネギーメロン大学に留学し、そこでクラウドの可能性に魅せられる。その可能性にいたたまれず2010年にAmazonに転職。エバンジェリストとしてAWSの日本事業の開発トップとして携わり、5年間ほど同社に在籍した。

ある日、仲間の技術者たちと酒を飲みながら、ソラコムのベースとなるビジネスアイデアを思いつく。翌朝、リリースノート(Amazon独自のサービスメニュー案)を書いてみたが、酒で酔ったときの発案にも関わらず、いけると確信。玉川がクラウド開発の専門家として、Amazonのクラウドサービスをベースと利用者との隙間を上手に埋めることを考えたプラットフォーム・ビジネスだ。

「通信の民主主義を目指して設立しました。ソラコムのSIMは1枚単位で始められるし、すぐに止めることもできます。大手のプレイヤーだけが利用するのではなく、個人や中小企業でも使えってもらえます。まだこの手の類似サービスはほかにはありません」

ソラコムは2年足らずで、急速に9つのサービス開発、ファンディングやグローバル展開を行ったが、どう実現できたのだろうか。新米社長のマネジメントをだれが引っ張ったのか? 玉川は、すでにAmazon時代に、技術者よりも事業部長としての役割を担って、失敗を重ねながら、プロジェクト管理や組織マネジメントを学んだという。

玉川は、ビジネスモデルにおいて3つの要素を考えていた。

1. チームの強さ
スタッフは、自らの仕事のつきあいで広げた仲間から最強のメンバーを集めた。Amazon、IBM、トレンドマイクロ、クックパッド、ソニーなどから知人、後輩を募ったという。個々に役割を与えて、それぞれが切り開いてくれるそうだ。またソラコムには就業時間という概念がない。「いまは、Bクラスの人間はいらない。Aクラスの人間ならば、同じ夢に向かっていくらでも働いてくれる」

2. プロプライアタリー(proprietary)なテクノロジー
競合ができてきたら、どうするのかとの質問に対して、「開発してきたシステムは、基本的に特許に守られた技術で構築されているから、そう簡単にはまねがされにくい」という。

3. 狙っているマーケットが大きい。
日本の3つのキャリアだけで、30兆円の企業価値がある。その1%を取るだけでも3000億円の企業価値になる。IoTは今後どんどん普及するし、グローバル展開すれば大きな売り上げになるはずだ。昨年12月にアメリカ支社を、2月にはヨーロッパ支社の開設に続き、近いうちにアジアへ進出するという。