外貨建て商品として為替差益も狙える

2016年に入ってからプラチナが多く買われた。価格が大幅に下がり、割安感が出たからだ。2015年10月には、ドル建て価格で1トロイオンス(約31グラム)当たり1000ドルを超えていたが、2016年に入って1月中旬には、810ドル台まで下落。値上がり狙いで投資をするバーゲンハンターがこれに殺到した。

投資家の中には、金との価格差に注目している人も多い。もともと金とプラチナの価格は、ある程度、連動して動くことが知られている。以前は、金よりもプラチナの価格のほうが高かった。金よりも安くなり、価格差が大きくなれば、いずれプラチナの価格が金にさや寄せ(※)することが期待できる。2016年の1月がまさにその状態だったわけだ。
※相場の変動によって値段の開きが小さくなること

ただ、金とプラチナの特性を理解しておく必要がある。決定的な違いは、金には通貨としての側面があり、プラチナにはないということ。1971年8月まで米国が金本位制を採用していた名残から、現在でも有事の際など不安要素が大きいときには金が買われやすい。それは多くの国の中央銀行が所有する外貨資産の一部に金を組み入れていることでもわかる。その一方、日本を含め、プラチナを所有している中央銀行はない。

需要量も圧倒的に違う。金の年間需要は世界全体で4000トンほどだが、プラチナは200トンほどと金の20分の1程度しかない。しかも、そのほとんどが産業用だ。プラチナは主に自動車の排ガスを除去するための触媒として利用される。結果、好景気で車がよく売れるときには、需要が増える傾向にある。

金と比べてプラチナの市場規模は小さいため、投資マネーの流入などがあると、値動きが大きくなりやすいのも特徴だ。

供給面はどうか。プラチナの供給の約7割は、南アフリカに頼っている。以前は、南アフリカで黒人労働者のストライキなどがあると、供給がストップしてしまうこともあったが、現在では、ある程度の在庫をストックしているため、供給面は安定していると考えていいだろう。

共通点もある。どちらも実物資産であるということだ。世界的な金融緩和によってマネーの量が増え、お金の価値は目減りしつつある。この先、インフレに突入することがあれば、そのときに資産の目減りを防ぐことができるのは実物資産だ。

以上のような理由からプラチナは買いとなるが、単独での保有はお勧めできない。実物資産としての価値は、通貨の側面がある金のほうが優れているからだ。ただ、「有事の金」といわれるだけあって、平和な時代には金の価格は低迷する傾向にある。一方のプラチナは、環境面に注目が集まる平和な時代こそ、需要が増すといえる。そこで実物資産として金を保有しつつ、補完的な意味合いでプラチナを購入してはどうだろうか。

欧州は景気がパッとしないといわれているが、自動車の販売は伸びている。プラチナはとくにディーゼル車の排ガス除去に利用されるため、欧州市場の影響は大きい。欧州の排ガス規制は、さらに強化される傾向にあるから、プラチナの需要は期待できる。

もうひとつ、忘れてはならないのは、金もプラチナもドル建て取引が基本であること。ドル建ての資産となり、外貨建ての金融商品を持つのと同じ意味合いになる。そのため、円高局面で投資すれば、円安になったときに為替差益を含み益として得られる効果もある。

亀井幸一郎

金融・貴金属アナリスト。マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表取締役。山一証券、投資顧問会社MMIを経て、1998年に独立。著書に『急騰前の金を買いなさい』など。
 
(向山 勇=構成)
【関連記事】
金・プラチナ「現物で贈与」は新たな節税テクとなるか
アパホテル社長「不動産は買いたいときに買ってはいけない」
無税!「教育資金の一括贈与」でお得に財産贈与する方法
芸能界最強の投資家ボビー・オロゴンが伝授!「世界4分割投資法」
妻のパート収入で儲かるのは、実際いくらまで?