「来て良かった」と感じてもらえる横浜
【三宅】いまの話は非常に重要なところで、日本語できちんと話すことができない人が、いきなり英語で話せるわけはありません。やはり、日本語も言いたいことを、きちんと趣旨を述べて、正確に発言するということを、しっかりと訓練する。同じように英語の場合は、とりわけ「Why」「Because」の論理で、理由が求められますので、そこをしっかりと体得すべきでしょう。
【中山】それと、間違うことを恐れないことですね。これが結構大きいのではないですか。日本人の英語学習は文法から入っていた時期が長い。だから「I」の次に動詞が来て、それも現在形だとか過去形だとか正しく表記、発音しなければいけないと。もう、それだけでしゃべれなくなってしまいます。
日産時代には、こちらが話したり、提案している途中から、相手がバーンと反論してきたりするわけです。もうそうすると、文法だとか言い回しなどにかまってはいられません。しかも、ネイティブスピーカーばかりではありませんから、言ってみれば不完全な英語での応酬です。だから、そこはもう躊躇していてはだめです。
【三宅】そういった面では、人生における英語との出合いを教科ではなく、活動としたのは良いことです。どんどん耳から入ってくる単語やセンテンスに慣れて、コミュニケーションの手段として使っていくというのは、きわめて自然です。
【中山】そうですね。ヒップホップやダンスをやるみたいに、楽しんでいければ素晴らしい。
【三宅】ところで、これから2020年に向けて、横浜に来る外国人は多種多様な国籍になっていきます。その際、市としての対応、接遇については、どう取り組んでいかれますか。中山さんは海外体験も豊富だと思いますが、海外で受けたおもてなしで、何か印象に残っていることはありますか。
【中山】日産自動車がルノーとアライアンス以前、ヨーロッパ日産の立ち上げに携わりました。最終的に決まったのは、オランダのアムステルダム。そこで乗ったタクシーの運転手さんは英語ができます。ネザーランドなまりの英語でしたが、移動に不安を抱いていた私はホッとしたことを覚えています。そして、それが外国人にとっては最高のおもてなしだと感じました。
いま、横浜市が考えているのは「ユニバーサルツーリズム」です。これは、国籍の違いや障害の有無に関わらず、横浜を訪れた皆様に、「来て良かった」と感じてもらえることです。
言葉が通じることはもちろんですけれども、歩きやすさ、食事の美味しさも含め、安心して観光を楽しんでいただけるように、多言語、多文化に対応できる、外国人旅行者の受入環境の整備が急がれます。ソフト、ハードの両面で、まだまだ、やることは山のようにあると思います。
【三宅】ありがとうございました。