「クリエイティビティのない都市は消失する」

三宅義和・イーオン社長

【三宅】横浜市はコンベンションや国際会議の招致にも非常に積極的です。この5月には、アジア開発銀行の年次総会も開催されると伺っています。あるいはフィルムコミッションで撮影支援した作品では、昨年ヒットしたテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のロケ地巡りも盛んだそうですね。

スポーツに目を移しますと、競技施設も充実していて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでも会場になります。実は、私どももラグビー日本代表の公式語学トレーニングサポーターとなり、先日、都内で記者会見を行いました。2019年に日本でワールドカップが開催され、決勝戦が横浜国際総合競技場に決まっています。中山さんがこうした旗振りを積極的に行うのは、どのような狙いからなのでしょうか。

【中山】私は「クリエイティブシティ」を提唱した社会学者のリチャード・フロリダという人の言葉がすごく好きです。彼は「クリエイティビティのない都市はいずれ消失する」ということを、2000年ぐらいに言っています。やはり、これから都市間競争が国境を越えて盛んになってくるでしょう。

その中で、動きのない都市というのは、淘汰されてしまう。例えば上海にしろ、広州にしろ、あるいはシンガポールもそうですが、1年行かないと、もう様変わりしていますよね。あれぐらいのスピード感がなければいけないと思っています。

その中で、国際会議・研修や報奨旅行、展示会といったイベントは経済成長や観光のエンジンになりますし、それからフィルムコミッションについても、東南アジアで日本の映画やドラマなどのコンテンツが流されることがすごく多いので、そこに魅力を伝えていくことも積極的に推進したいと考えているところです。

【三宅】ところで、教育の面ですけれども、いま、次期学習指導要領の改訂。それから大学入試改革の議論が進んでいます。そういった中で、英語教育に関して、特に小学校3年生から、外国語活動をスタートし、5年生からは教科になります。しかし、横浜市はすでに1年生から小学校の英語を導入し、3年生から必修になるそうですね。また、大学に関しても横浜市立大学では、TOEICのスコア600点。また英検準1級を取得していないと3年次に進級できないというふうにも聞いております。やはり、国際都市だけに英語への力の入れ方は違います。

【中山】多国籍の企業で働いていて、すごく思ったのは、母国語の基礎がしっかりしていないと、どの国の言語もきちんとしゃべれないということです。ですから、英語は流暢に話すものの、内容がほとんどないという人はたくさんいます。とすれば、論理的に思考するという方法を、どうやって身につけさせるかのほうが重要な気がします。

私は有名な人物のスピーチを好んで聞きます。例えば、トランプ大統領がすごいなと思ったのは、中学生でもわかる単語でしか話していません。それから関係代名詞をいっさい使わずに、単文を多用しています。

高尚な英語にしてしまえば、してしまうほど、共感する人が少なくなっていきます。もちろん、これは戦略だと思いますが、英語を勉強するということに即して考えると、そういった思考ができるかどうかということが重要なのではないでしょうか。

ですから、英語を学び始める年齢を低くしたなら、同時に論理的な思考方法を一緒にカリキュラムに加えないと、結局、どちらも中途半端になってしまうのではないかなという懸念は持っています。