トランプのコミュニケーション戦略の重要ポイント
「六次の隔たり」という理論がある。全ての人は6ステップの範囲内でつながっていて、友達の友達を介して世界中の人々と間接的な知り合いになれるという仮説だ。
その一方でPewResearchの調査では、米国のミレニアル世代(2000年以降に成人したか社会に出た層)におけるフェイスブックでの友達の数の中央値は250人前後であると指摘している。このデータを元に計算すると「四次の隔たり」、すなわち4ステップの範囲内で世界中の人々と間接的な知り合いになることができるという試算もある。
実は、トランプのコミュニケーション戦略においてソーシャルメディアが重要視されているのには、このような事情があるのだ。
ライアン会長は、先に紹介した「ソーシャルメディアユーザーの88%が登録済み有権者」というデータ以外にも、「ソーシャルメディアを通じて政治問題を目にした方が、より身近に関心をもつと答えた人が25%」など多くのデータを示してくれた。ここで重要なのは、今や米国においては、主要メディアよりはソーシャルメディアの方が有権者の獲得にはより重要になっていると、政治マーケティングの大家が判断している点である。ライアン会長は消費者マーケティングの理論と実践にも詳しいが、「消費者マーケティングで消費者がソーシャルメディアの影響を受けている以上に、有権者はソーシャルメディアを通じて友人の口コミからの影響で選挙行動を行うようになっている」と指摘している。
トランプは2017年2月19日フロリダ州メルボルンで、大統領としては異例の支持者向け集会を行ったが、その際に一般男性を壇上に上げたことが話題となった。主要メディアではセキュリティー上問題があると指摘する向きもあったが、筆者は、これは事前から周到に計画されたマーケティング戦略の重要な一部であると観察した。
「オンラインの世界で間接的につながっているだけではなく、オフラインの世界でも直接的につながっているのがトランプ大統領」という意識を、コア支持者層に対してさらに強固にするのに大きく貢献したはずだからだ。