3月11日で、東日本大震災発生から6年となる。震災により、家族や秘書を失った衆議院議員(民進党)の黄川田徹氏に前回に引き続き、取材を行った。遺族として、国会議員として揺れ動くその思いに迫った。

首相はもっと踏み込んで発言をするべきだった

――震災発生後、菅政権の姿勢に問題を提起されていましたね。
黄川田徹・衆議院議員

私は当時、与党の一員でしたが、菅首相の姿勢についての率直な思いを新聞やテレビなどを通じて伝えました。首相はたいへんな思いをされたのでしょうが、被災地にメッセ―ジが十分には伝わっていなかったように感じていたのです。

あのようなとき、首相はもっと踏み込んで発言をするべきです。「今こそ、政府が前面に出るから、心配はいらない」と。例えば、自衛隊の出動ならば、「直ちに10万人を早急に派遣する」と。ところが、何かに気兼ねしていたのか、そこまでは言わない。あれでは、被災地の人たちの不安を取り除くことはできません。

「自衛隊を10万人派遣する」と言ったからといって、自衛隊がすぐに被災地に入ることができるかどうかは、別の問題としてあるのかもしれません。しかし、少なくとも被災者をはじめ、国民に向けてのメッセージにはなります。その強いメッセージがあれば、物資などが何かの事情で少々遅れて届いたとしても「政府はきちんと運んでくれる」と思うものなのです。

それをすることなく、首相自ら東京電力へ出向き、掛け合うようなことをしていました。かえって事態を混乱させているように私には見えたのです。

あのとき、首相がするべきことはほかにもたくさんありました。首相に欠けていたのは、決断と実行です。陸前高田市を始め、被災地に頻繁に行っていた私からすると、首相の意識と被災地のそれとの距離感を感じて仕方がなかったのです。

「政府が、被災地を支えるんだ」というメッセージを多くの人が求めていました。それが、首相の口からなかなか出てこない。メッセージらしきものがあったとしても、その出し方に問題がありました。被災地からすると、何を考えているのか、わからない。私は、内心忸怩たるものがありました。

政治家はまずは、被災地へ安全・安心のメッセ―ジを国民に伝える。次に、入口を広げて道筋をつけていく。後は、役人にその出口をしっかり閉めてもらうように指示をしていく。このような姿勢が必要なのだ、と思います。

政治家は、役人のようにいわば、実務家として対処するわけではないのです。30年以上、議員をする人もいますが、それはごく少数です。一方で、役人たちは30年以上勤務する人が多数です。役人たちが仕事をしやすい環境をつくるのが、政治家の1つの仕事だと私は思うのです。役人のほうが、実務の面でははるかに優秀なのですから。

ところが、役人たちを抑えつけようとしたり、議論をしてねじ伏せようとしたりする議員が、当時の民主党にはいたかもしれません。「議論で勝った、負けた」と言い争っている場合ではなかったのです。そんなところで、頑張っても意味がないでしょう。

まして与党ならば、復旧・復興に向けて法案を次々と通さないといけない。そこに、与党の存在意義があるのです。あのとき、国民が、被災者が求めていたのは、政権与党の決断と実行だったのです。