2国間においては、それぞれが自国で得意な産業に特化し、
苦手な分野は適切な交換比率で他国から輸入すれば、
貿易をしなかったときよりも全体の生産量が増える。
だから、お互いの国がトクをするということだ。
日本は、自動車を作るのは得意だけど、土地が狭いから農業は苦手。
米国は、自動車は日本に及ばないが、農業は得意。
ならば、日本が大量の自動車を作って米国に輸出し、
米国が大量の農産物を作って日本に輸出すれば、
全体の生産量が増えて、両国ともハッピーになる、というのが
TPPの考え方の基本じゃ。
経済学的には、米国全体にとっても、TPPは良いものだ。
しかし、政治の世界となると、また違う問題がある。
米国全体にとってはよくても、
苦手な産業に従事している労働者にとっては死活問題だ。
だから、米国の自動車労働者からすると、TPPは不愉快なのだ。
トランプ大統領は選挙の時にTPP離脱を公約して
自動車労働者の支持を受けた。
その公約を守ったということだ。
自由貿易で世界全体がハッピーになるのはいいことだと思う。
だけど、分業のせいで自国の産業が壊滅状態になったら、
仕事を変えないといけない人も出てくるだろう。
そうすると個人にとってはハッピーだと言えるのだろうか?
TPP交渉が一筋縄ではいかないのもわかるな。
監修 塚崎公義
久留米大学商学部教授。1981年、東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。経済分析、経済予測などに従事し、2005年に退職して久留米大学へ。『なんだ、そうだったのか! 経済入門』など著書多数。
久留米大学商学部教授。1981年、東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。経済分析、経済予測などに従事し、2005年に退職して久留米大学へ。『なんだ、そうだったのか! 経済入門』など著書多数。
(監修=塚崎公義(久留米大学教授) 作画=室木おすし [第8回テーマ=自由貿易])