大手に勝つ●その2「商品を絞り、強みを深掘り」

また、永井氏は自社商品の特徴を次のように語る。

「当社が手がける野球用品は、主力の防具以外に、グローブ・ミットが中心です。バットやスパイクなども手がけますが、大手メーカーのように幅広い商品を扱う気はなく、自社の得意分野に絞っており、丁寧な製作を心がけています」

ベルガードの防具を身に着けた捕手

実は、永井氏はかつて前身となるベルガード株式会社の社員だった。1935年に創業したベルガードは、当初はボールを製造していたが、業界内での評価を高めたのが防具。国内外の大手メーカー防具のOEM(相手先ブランドに合わせた商品供給)を積極的に担い、一時は日本国内のプロ野球捕手が使う防具の多くは同社製だったという。2000年代以降は韓国プロ野球にも進出。当地では防具・グローブメーカーとしての存在感を増していた。

それが、永井氏が勤続30年を迎えた2012年に会社が倒産。同氏が商標を引き継ぎ、孤軍奮闘して4カ月後に再スタートさせた。元同僚だった熟練職人も雇用したため技術力は失われなかった。一度倒産しOEM契約が終了したことも結果的に追い風となる。ベルガードにOEMで防具を注文していた大手メーカーは、自社の技術ではなかったため、防具市場の開拓に興味があっても、現状では同分野を強化することができない。かつて警備関連企業・団体向けにも納入した防具技術が新会社に活かされており、会社設立以来、増収増益が続く。

大手に勝つ●その3「審判用・女性用にも活路」

同社が手がける商品のうち、需要が高いものの1つに審判用防具がある。昔の審判はユニホームの上から防具を着ていたが、現在はマスク以外の防具はユニホームの下に着用する。

「防具を内部に着ける審判は一段と汗をかくので、装着時の快適性も高めています。審判用マスクも、顔に触れるパッド部分に吸水布加工を施した商品もある。マスクを装着したまま、ストライクやボールといった発声がしやすいように形状も工夫。審判用にきめ細かく対応するメーカーはないので、競合との差別化にもつながっています」(同)

(左)審判用に形状が工夫された防具(右)ヒョウ柄のグローブを愛用する中野菜摘選手(京都フローラ)

また、女性用の野球用品も大手が注力しない分野だ。ベルガードのグローブやミットはオーダーメイドで製作できるので、ハートをあしらったグローブやヒョウ柄など派手なグローブを注文する選手もいる。一つひとつの注文に真摯に応えることで、アマチュア選手も含めた女性客を地道に増やしている。