「トランプ禍」が自動車産業を直撃!

しかし、トランプ氏は20日の就任式で公約通り、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明し、メキシコに進出している自動車各社は警戒感を強めた。仮に米国がNAFTAを離脱するようなら、メキシコから無関税で米国に輸出してきた各社は大きな転換点を迎える。販売台数で3割、営業利益の4割を稼ぎ出すトヨタの北米事業にも痛手であり、メキシコ新工場の見直しを迫られる可能性も否定できない。

トヨタの北米事業にとって、波乱要因はトランプ禍だけでない。気がかりなのは今夏に投入する新型カムリの販売動向だ。豊田社長は「カムリは15年にわたって米国の最量販車だった。その地位に甘んじるわけにはいかない」と手ぐすねを引く。

しかし、安値圏にあるガソリン価格を背景に米新車販売はカムリが属するセダン系は不振で、SUV(多目的スポーツ車)やピックアップトラックに市場を奪われている。実際、GMはセダン系の在庫圧縮に向け、1月に米国内の乗用車生産5工場での一部生産停止などを発表しており、トヨタは新型カムリの販売動向に神経質にならざるを得ない。カムリ投入が不発に終わるようなら、世界販売トップの座奪回も危うくなる。

さらに、トランプ氏は23日の米企業経営者との会合で「日本との自動車貿易は不公平だ」と日本車を槍玉に挙げて批判した。翌24日にはフォードのマイク・フィールズ最高経営責任者(CEO)がトランプ氏との会合後に「貿易を妨げる根源は為替操作だ」と述べ、ドル高是正をトランプ氏に求めたとされる。

1980年代を彷彿させる貿易不均衡を背景にした「日本たたき」にドル高是正の圧力が加われば、トヨタの北米事業はトリレンマどころか5重苦にも見舞われかねない。トヨタは「米国第一」を掲げるトランプ政権下で、米国に根ざしてきた「企業市民」としての胆力が試されそうだ。

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