100億ドル米国投資は急ごしらえ
トヨタ自動車にとって、文字通り「ドル箱」的存在な北米事業が波乱含みの局面を迎えている。トランプ米大統領は1月20日の就任前に、“口先介入”でトヨタにメキシコ工場新設の撤回を迫り、一気に不確実性が高まった。しかし、波乱要因は「トランプ禍」にとどまらない。
米国でセダン市場が低迷する最中、6年ぶりの全面改良を今夏に控える最量販車「カムリ」の成否も気がかりだ。新型カムリが不発となれば、昨年、独フォルクスワーゲン(VW)に明け渡した世界販売トップの座への返り咲きも危うい。最悪の場合、トリレンマ(三重苦)に陥りかねない。
トヨタは年明けからトランプ氏の“つぶやき”に翻弄された。2019年稼働を目指すメキシコ新工場に対し、5日のツイッターで「あり得ない。高い関税を払え」と投稿し、脅し同然の行動に出た。米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーターによるメキシコ投資への批判の矛先がトヨタに向けられた。これにはトヨタも慌てた。デトロイトで9日開幕した北米国際自動車ショーで、豊田章男社長は今後5年間で米国に100億ドルを投資する計画を発表した。会見は当初から予定されていたものの新型カムリ発表が目的で、新たな米国投資の発表は急ごしらえだったことは容易に想像が付く。
トランプ氏の脅しには、フォードがメキシコ工場の新設を撤回し、欧米自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は10億ドルの投資を表明するなどで屈した。トヨタも24日、新規投資の具体策として、米インディアナ州の工場に約6億ドルを投じ、年間生産能力を約4万台引き上げると発表し、これに追随した。