人手不足の中国で需要が急増している

産業用ロボットの国内最大手・安川電機。同社は世界初の「7軸ロボット」を手がけるなど技術でもトップを走る。いま、この産業用ロボットの市場には大きな変化が現れつつある。キーワードは中国だ。同社のロボット事業のキーパーソンである南善勝常務は話す。

「沿岸部のインフラ関連の工事が内陸部に移り、出稼ぎ労働者の減少が進んでいる。さらに一人っ子政策の世代は学歴が総じて高く、フロアワーカーを避ける。産業用ロボットでそれを補うことは、彼らの喫緊の課題となっています」

人件費高騰や労働力不足は、巨大工場への産業用ロボット導入を加速させる。すでに中国におけるロボットの生産・販売は増加しており、安川電機はその主役の一人だといえる。

「また、中国に限らず、この数年間、現場でのロボットと人との距離が縮まり、お互いが共存して働く環境が整ってきた」と南さんは続ける。

(左)双腕形の15軸多関節ロボット。人と同等のサイズのため、人の作業スペースに設置することができる。(写真=AFLO)(右)地域別ロボット保有台数推移

大きな変化はISOの安全基準の改正だ。これまで人とロボットは安全柵で分離する必要があった。改正で、安全性能の高まりと基準に準じた措置をとれば、人とロボットが同じフロアで働くことが可能になった。

「従来の工場の自動化では、『0か100か』という考え方が主流でした。安全柵が工場内から消えれば、人とロボットがお互いの長所を活かし合い、『80%の自動化』といった形で自動化率を割合で示せるようになる。ロボットが主体的に仕事をしてそれを人が補助したり、逆に人の仕事をロボットが補助したりしながら、人とロボットが同じ空間で共存できるわけです」

そのうえで南さんは、次なるロボット事業の展開として「バイオメディカル分野への進出」を挙げる。アーム型ロボットを組み合わせた「双腕ロボット」が、抗がん剤の調合作業や新薬研究で活用されているからだ。