高学歴で高い年収の親は、子を中学受験させる
地図の模様や上位の顔ぶれから想像がつくと思いますが、国・私立中学進学率が高いエリアは、富裕層が多いエリアと重なっています。2013年の総務省『住宅土地統計』から都内49市区の平均世帯年収を出し、上図の国・私立中学進学率との相関をとると、相関係数は+0.770となります。リッチな地域ほど、中学受験をする子どもが多い傾向です。
私立中学は学費が高いですし、幼少期からの塾通いの費用負担もありますので、経済力と関連するのは頷けます。ちなみに年収1000万以上の家庭の割合は、公立中学では14.6%ですが、私立中学では52.9%にもなっています(文科省『子どもの学習費調査』2014年度)。
なお、高学歴の住民の割合とはもっと強く相関しています。図2は、都内49市区の住民(学生は除く)の大卒率と国・私立中学進学率の相関図です。
大卒の住民が多い地域ほど、国・私立の中学に進む生徒が多い。相関係数は+0.8076で、先ほどの年収よりも強い相関です。稼ぎがなくても文化的教養が高く、わが子の教育に熱心な家庭も多いですからね。どちらかといえば、家庭の経済資本よりも文化資本が効くようです。
東京の地域単位のデータですが、中学受験は社会階層と非常に強く関連していることがうかがわれます。「それがどうした?」と言われるかもしれませんが、東大などの有力大学の入学者の多くが、中高一貫の私立校の出身者で占められていることを思うと、公正の観点からしてどうなのか……。
早期受験は、富裕層の親が自分の子どもに、高い地位や財産を巧みに「密輸」する装置として機能しているのではないか。早い段階から私立校に行かせるには、お金がかかりますからね。90年代の初頭でしたか、この問題が認識され、私立校からの東大入学者の枠を制限しようという議論があったほどです。詳細は、苅谷剛彦教授の『大衆教育社会のゆくえ』(中公新書)という本を読んでいただければと思います。本連載の第9回記事でも、ちょっとばかり触れています(http://president.jp/articles/-/17938)。