常連客を増やす秘訣は「お客に勝たせる」こと

筆者はかつてトイレタリー・化粧品メーカーでも働いていたので、そこで学んだ「企業と一般消費者とのコミュニケーション」が専門です。その視点でカフェ・喫茶店を分析すると、人気店でも次の2つのタイプに分かれると感じています。

(1)「店や店員」が「お客」に勝つ
(2)「お客」が「店や店員」に勝つ

(1)の代表例がスターバックス、(2)の代表例がコメダ珈琲店といえます。

制服姿のコメダの店舗スタッフ

たとえばスタバの店舗スタッフは「グリーンエプロン」と呼ばれる緑色のエプロンを身につけており、カウンター内で作業するバリスタ(コーヒーを扱う職人)は若者に人気の職業です。一方、コメダの店舗スタッフの制服はスタイリッシュとはいえません。でも「普段着でも気軽に来店できるよう、お客さんに勝たない制服」なのだそうです。

この話をメニューに広げて考えるとどうでしょうか。たっぷりの分量で満腹感を持てるのも「お客が店に勝つ」ことだと思います。

もう1つ、収入が伸びない時代の消費者心理には「ポケットマネーで過ごせる贅沢」もあります。モーニングサービス以外の時間帯はドリンク+フードを頼むと、多くのメニューで1000円を超えるコメダですが、その価格以上の価値(味や分量)が満足感につながっているといえるでしょう。

高井尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。著書に『カフェと日本人』(講談社)、『「解」は己の中にあり』(同)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)、『なぜ「高くても売れる」のか』(文藝春秋)、『日本カフェ興亡記』(日本経済新聞出版社)、『花王「百年・愚直」のものづくり』(日経ビジネス人文庫)などがある。
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