派遣社員の「借入額」は正社員と大差ない
では、どれくらいの非正規社員が住宅ローンを組んでいるのだろうか?
住宅ローン専門金融機関のアルヒが、ARUHI「フラット35」を借り入れた約5万人を対象に行った調査では、利用者の70%以上を会社員が占め、続いて自営業が約17%、公務員が約5%となっている。
また、短期社員(おそらく契約社員?)1%、派遣社員約2%、パート等2%で、割合は少ないものの、非正規社員も実際に住宅ローンを組んでいる。
続いて、職種別の平均借入額と頭金の額を見てみよう。
全利用者の借入額は平均2112万円、頭金は587万円で、おおむねセオリー通り不動産物件の2割程度の頭金を用意している計算だ。
意外にも、派遣社員の借入額は会社員と大差なく、借入額が一番多いのは自営業となっている。自営業者といっても、規模の大小や事業期間などさまざまなので一概に言えないが、一般的には会社員に比べて、当然、審査は厳しくなる。審査に必要な書類も、会社員が前年の勤務先からの給与所得を元に行うのに対して、個人事業主は直近3年分の確定申告の提出が求められる。
頭金では、年金受給者が一番多いのはなぜか。この現象は、収入が限られていて、その分頭金を増やさなければ借りられないという事情があるから。いずれの職種も年収が低いほど頭金を多く用意していることからも、この現象を解説することができるだろう。
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドや日本マクドナルド、ニチイ学館、すき家やなか卯のゼンショー、吉野家など……。これらはすべて、非正規社員の割合が高い労働集約型企業である。雇用者数全体で見ても非正規社員は右肩上がりに伸びている。
総務省の「労働力調査」によると、2015年の雇用者数約5300万人のうち、正規社員は62.6%、非正規社員は37.4%。男女別でも、2005年以降、いずれも非正規社員の割合は増加傾向にあり、とりわけ女性は60%近くが非正規社員となっている。そうなると、非正規社員という雇用形態で住宅ローンを組む人も増えてくると予想される。