高収入者はなぜ、みせびらかし消費をしたがるのか?
以前、こんな興味深い調査結果*についてお話しました。
「購買力」が次の1と2の世界で等しい場合、「あなたはどちらの世界に住みたいですか?」と質問をすると、56%が1を選びました。
1.自分は収入が5万ドルで他のすべての人は収入が2万5000ドルの世界
2.自分は収入が10万ドルで他のすべての人は収入が20万ドルの世界
*サラ・ソルニック(バーモント大学経済学部アソシエイトプロフェッサー)とデビッド・ヘメンウェイ(ハーバード大学公衆衛生大学院教授)が、ハーバード大学の学生と職員に質問した(調査の詳細は、http://president.jp/articles/-/20185)。
この質問に対する結果から導きだせること。それは……。
「人はお金持ちになりたいのではなく、他人よりお金持ちでいたいだけだ」
人は純粋にお金というものを絶対的な数量として欲しているのではなく、社会における相対的に高い地位(あるいは高収入の職業)を欲しているというのが真相だということです。
意識しているかいないかは別にして、そうした本性が私たちの中には潜んでいるのです。
▼地位財への誇示的消費が財産形成の阻害要因となる
このような、人の「社会における相対的に高い地位」を欲する傾向と強く関連していると思われるのが、地位財(周囲との比較によって満足を得るもの)です(関連記事URL http://president.jp/articles/-/20185)。
自分の相対的地位の高さを示す(自分が高い相対的地位にあることを示す)ため、人は消費をします。このことについて、古くは1899年にアメリカの経済・社会学者のソースティン・ヴェブレンが『有閑階級の理論』の中で、次のような主旨のことを述べています。
<上流階級は、自分の社会的地位を示すために衒示的消費(誇示的消費、みせびらかしの消費)を行う>
また、同じようにハーバード大学教授のジェームズ・デューゼンベリーは1949年に個人の消費活動はその収入に左右されるだけでなく、周囲の人間と張り合おうとすることによっても影響を受けると述べています。つまり、人にはデモンストレーション効果のある消費行動が見られるのです(関連記事URL http://president.jp/articles/-/19876)。