積水ハウスが創業まもなく、無名だったころから営業で成果を上げてきた和田勇会長。リーダーはどうあるべきかを語った。和歌山出身の若手が集う「わかやま未来会議」での講演を全公開。

CSのために体を張ればどんな商売も成功する

積水ハウスの経営で柱になるのは顧客満足(CS)だと思います。阪神淡路大震災や東日本大震災などの災害が起きたときは、どこよりも早くお客さんの安否を尋ねるなどの対応がとれました。そういうことが習慣化されているのです。

和田勇・積水ハウス会長兼CEO

もちろんCSは第一にお客さんのためですが、社員のためにもなります。私は自分の経験からそう思います。若いころに仕事が辛くて何度も会社を辞めたいと思ったときに、お客さんの喜ぶ顔を見るとまた頑張ろうという気持ちになれたからです。

私が入社した昭和40年は大変な就職難の年でした。何とか採用してもらった積水ハウスはまだ200人そこそこの会社。今のように住宅の総合展示場はないし、私が入社する前年まで創業から5年間赤字の会社でしたから広告にもお金を使えません。飛び込みで団地や社宅に訪問するのですが、知名度がないので相手にされません。名刺を出すと「水」を「木」と見間違えて、「つみきハウスですか」と言われる始末です。

それでもお客さんのところに根気よく何度も通えば気持ちが通じるものです。新人の夏、何とか1軒売れ、買ってくれたお客さんを大事にすると、そのお客さんが知り合いを紹介してくれる。それで3年目には全国で一番売る営業になりました。経理上は、契約し竣工すれば売り上げが立ち、それでおしまいですが、お客さんとの関係はむしろそこからがスタートです。

だから私が社長になったときも社員には「CSを徹底しなさい」と言いました。顧客満足のために本気で体を張れば、どんな商売でもうまくいくと思います。