1958年、高度経済成長の幕開けの年に生まれた東京タワー。巨大な形状がのびゆく時代を思わせた。時の積み重ねを経て、いま「成熟」を見せる――。

生まれて初めて東京タワーに上ったのは、小学校に上がるか上がらないかくらいのころ。当時、僕の家は大家族で、同居していたおばあちゃんと若いおじさんが僕と弟を連れ出してくれることが多かった。おそらく東京タワーに行ったときもそうだったのだと思う。

そのときの記憶に残っているのは、落語家の林家三平が司会のテレビ番組を中継していたこと。それから売店で買った焼きそばに、青のりがいっぱいかかっていておいしかったこと。この2つが一番古い東京タワーの思い出だ。後年調べてみたら、当時、確かに林家三平が司会をつとめる「タワー・プレゼント」という番組があった。2階から3階あたりにフジテレビのサテライトスタジオがあったので、そこから放送していたのだろうが、僕の記憶の中には大展望台の一画で中継していた光景が刻まれている。

「ルックダウンウィンドウ」から恋人たちは145m下の地上の様子を楽しむ(左)。大展望台1階の「Club333」特設ステージではアーティストの生演奏が楽しめる。「キャンディ」を熱唱する原田真二(中上)。毎週金曜日は大展望台限定のリクエストプログラムを開催。DJはイメージガールの折井あゆみさん(中右)。レストラン「東京カレーラボ」は小山薫堂氏のプロデュースによる(中左)。

「ルックダウンウィンドウ」から恋人たちは145m下の地上の様子を楽しむ(左)。大展望台1階の「Club333」特設ステージではアーティストの生演奏が楽しめる。「キャンディ」を熱唱する原田真二(中上)。毎週金曜日は大展望台限定のリクエストプログラムを開催。DJはイメージガールの折井あゆみさん(中右)。レストラン「東京カレーラボ」は小山薫堂氏のプロデュースによる(中左)。

それから長い間、東京タワーを訪れる機会はなかったけれど、夜遊びを覚えた高校生のころ、六本木のディスコの行き帰りにロアビルの前あたりから見えたタワーの夜景が強く印象に残っている。

大人になってこの仕事を始めるようになってからは、昔ながらの観光スポットとして逆説的に注目するようになった。20年ほど前、東京タワーを訪れたとき、1階の大食堂で楕円形の型で抜いた昔ながらのチキンライスを食べたのだが、これがとてもおいしかった。