笑点の「白の人」でお馴染みの昇太師匠。その人気はさながら「落語王子」。舞台、ドラマでも独特の存在感を放っている。落語じゃなくてもよかったけど、落語を選んだ。そう話す童顔の奥に、ストイックなエンターテイナーの素顔を見た。
今、毎日がすごく楽しいんです。朝目覚めるたびに、「ああ、落語家になってよかったな」って思ってますからね。で、落語が楽しすぎちゃって、嫁さん探しまで気がいかない(笑)。と言っても、実は僕、もともとは落語は嫌いだったんですよ。うちの兄なんかは若いころから落語好きで、よくテープなんか聴いていましたが、僕にはとてつもなく古臭くって、「何やってんだ」っていう感じで見ていましたからね。
でも、陽気なことは大好き。大学に入って、ラテンアメリカ研究会というサークルに入ろうと思って、部室を訪ねたら誰もいない。そしたら、隣の部屋にいた人が「そこの部はご飯食べに行ってるから、うちの部屋で遊んでいたら」って。部屋に入ると、畳が敷いてあって、長火鉢があって、三味線が立てかけてある。落語研究部だったんですね。で、昼間っから大学生が冗談言っては大笑いしているんです。面白そうだから、そのまま入部しちゃった。
そこで落語を聴きに連れていかれて、生まれて初めて見た落語家が春風亭小朝師匠。当時、まだ2つ目でしたが噺を聴いて、「こんなおもしろいモノを知らなかったんだ。バカだったな俺は」と、思いましたね。それと前後して、先輩から「子ほめ」って噺を教わって演ってみたら、これがウケたんですね。それまでそんな経験はありませんから、ものすごく気持ちがよくなって、のめり込んじゃったんです。
大学2年になったとき、日本テレビで『全国学生落語名人位決定戦』という番組がありまして、出場する予定の先輩が急に出られなくなって、僕にお鉢が回ってきちゃった。当時僕は「子ほめ」と「まんじゅうこわい」の2つしか知らなかったので「まんじゅうこわい」を演ったら優勝しちゃうんです。それは、今になると、なぜ優勝したかわかるんですよ。審査員から見れば、プロの噺家以上にプロ臭い学生よりは、なんだかわからないけど、若々しくワーッとやるほうが面白かったんでしょうね。