睡眠に関して、睡眠時間のほかにもう一つ重要な要素がある。それは睡眠の質だ。「睡眠時間×睡眠の質=睡眠量」と考えてもらえばいい。睡眠の質がよければ、多少睡眠時間が短くなっても、問題は生じない。

睡眠の質は坂道でボールを転がすことにたとえることができる。質の高い睡眠は急な坂であり、ボールを転がせば勢いがつきやすい。一方で、傾きが緩やかだと、勢いがつくまでに時間がかかる。また、睡眠は食欲にも似ている。食事をとってから時間が経つほど食欲が出るように、睡眠も起きている時間が長くなるほど坂道は急になり、ストンと眠りに落ちて、しかも深く眠ることができる。

昼間だらだらしていて、仕事で頭も使わず体も動かしていない、というのでは、坂道の傾きは緩やかで、寝ようとしてもなかなか寝付けなくなる。

私は日中、空いた時間にはずっと体力づくりに励んでいる。なるべく暇な時間をつくらず、睡眠の坂道を急にするためだ。仕事が立て込んでいるときには肉体的な負荷(=体力づくり)を減らして仕事とのバランスを取る。種類は違うが、どちらも負荷に変わりない。負荷がかかればかかるほど、夜はぐっすり眠れる。

ただし、睡眠の質を上げたとしても、短時間の睡眠で済む人と、より長時間寝なければいけない人がいる。体温が高い人・低い人がいるのと同じように、これは体質的な問題だ。

まずは自分が短時間睡眠でも大丈夫な体質か調べてみよう。昔なら1セット100万円もする睡眠計が必要だったが、今では数百円のスマホアプリであっても、寝返りを検出することで、睡眠の質を調べることができる。日中にしっかり疲労していて、睡眠計では質の高い睡眠がとれているはずなのに、4時間半睡眠では起きられないなら、その人は体質的に向いていないと考えたほうがいい。

普段6~7時間寝ている人が、4時間半睡眠に移行しようと思うと、完全に定着するまでには1年ほどかかるが、3カ月も試してみれば、自分が4時間半睡眠に向いているか、何時間睡眠が適切なのかがわかるだろう。