仕事量が膨大で時間がない。睡眠時間は削っても平気か。その悩みに睡眠の専門医が科学的にお答えしよう。
短時間睡眠が可能だという根拠
日々慌ただしい生活を送っているビジネスマンにとって、睡眠時間をどれだけ確保するかというのは悩ましい問題だ。確かに睡眠時間を減らせば、それだけ自由に使える時間が増える。ただし、短くするといっても限度があることを知っておくべきだ。アメリカ空軍の支援のもとフロリダ大学が行った実験では、3時間睡眠を8日間続ければ、慢性的な睡眠不足に陥ってしまい、起きている間のパフォーマンスが落ちることがわかっている。
もう一つ、睡眠学の権威であるチューリッヒ大学のボルベイ教授の研究室で行われた実験を紹介しよう。
普段8時間睡眠をしている人を対象に、1週間のうち4日間は4時間睡眠をさせて、残りの3日間は8時間寝てもらった。その結果、多めに睡眠をとる日をつくれば、慢性的な睡眠不足に陥ることがないことがわかった。つまり、極端に短い睡眠はよくないが、平日に睡眠が少し足りなくても、週末に不足分を補うことで、月曜の朝にはリセットできるのだ。
私の場合、平日は4時間半睡眠で、土日は1日を6時間睡眠、もう1日を7時間半寝るという生活を30年続けているが、それで全く不都合がない。この生活を6時間睡眠の人と比べてみると、平日は1日当たり、1.5時間長く働けることになる。1カ月で約30時間働く時間が増える。つまり、週休2日で考えれば、6時間睡眠の人よりも毎月約1週間分、長く働けるのだ。
なぜ私は平日の睡眠時間を4時間半にしているか。睡眠の「90分サイクル」を聞いたことはあるだろうか。睡眠には眠りが浅く、体は眠っているが脳は活動していて目が覚めやすいレム睡眠と、脳も体も休んでいるノンレム睡眠の2種類がある。
睡眠時にはレム睡眠とノンレム睡眠を行ったりきたりするのだが、個人差はあるものの、だいたい90分周期でレム睡眠は表れる。そして、一度眠りについてから時間が経つごとに、レム睡眠の時間は長くなる。つまり、1時間半や3時間の睡眠でレム睡眠時に起きようと思うと、かなりシビアなタイミングを要求されるが、4時間半寝れば、それだけレム睡眠の時間も長くなっているので、目覚めやすい時間も長くなるのだ。