なぜ、日本の女性は睡眠時間が短いのか
日本人は、男女とも睡眠時間が少ないですが、特に女性が寝ていないのが目立ちます。ほとんどの国では、男性より女性のほうがよく寝ているのに、日本では女性のほうが睡眠時間が短いのです。
「男性が家事をやらない分、女性だけに負担がかかっているから」と結論付けがちですが、ほかのデータと併せて詳しく見てみると、要因はそれだけではなさそうです。
日本の女性は、テレビを見たりイベントに参加したりする時間も多いことがわかっています。一方で、確かに女性ばかりが家事や育児、介護を担っている傾向もある。つまり、テレビを見て夜更かしをする専業主婦と、仕事と家事の両立で睡眠時間を削っている働く女性と、二極化しているのではないかと考えられます。
仕事で徹夜するのはバカバカしいこと
特に既婚の働く女性は、仕事を「させてもらっている」という意識があって、「家事がおろそかになると仕事を辞めなくてはならなくなる」というプレッシャーを感じていますし、男性の側も、妻を「働かせてやっている」という意識がいまだにあります。「妻が働きたくて働いているんだから、家事に支障が出るようなら仕事をセーブするか辞めるかすべき」という発想です。このため、共働きであっても家事は女性がメインで受け持ち、結局、睡眠時間にしわ寄せがきてしまうのです。
私は10年ほどスウェーデンで働いていたのですが、男性の収入だけでは家計が回らないので、女性も働かなければならないのが前提になっています。なので当たり前のように働きますが、日本の女性たちは自然に働けていない状態。窮屈な感じがしてなりません。
睡眠に対する考え方は違わないと思いますが、スウェーデンでは徹夜したことを自慢したりする文化はありません。彼らにとって、仕事のために徹夜するなんてバカバカしいことですから。
1992年東京大学法学部卒。英国ウォーリック大学で博士号(PhD)。97年から10年間、ストックホルム商科大学欧州日本研究所勤務。日本と北欧を中心とした比較社会システムを研究する。
構成=大井明子 撮影=向井 渉 イラスト=北澤平祐