2017年アメリカ進出予定。日本の学校にも入れてほしいが……

【田原】最初に数学を選んだのは世界進出を見据えてのことだとおっしゃっていましたね。今後の展開を教えてください。

【神野】いまオセアニアのある国の教育庁に話をしています。日本でキュビナのシステムを導入できるのは学習塾くらいですが、海外の公教育機関は予算をしっかり持っているので期待しています。もっとも一口に海外といっても、途上国と先進国ではマーケットが違います。いまアプローチしているところのように公教育が発達している国では公教育に。そうでない国では自分たちで学習塾を展開していこうと考えています。

【田原】アメリカはどうですか。世界展開するなら避けて通れない国です。

【神野】来年3月に、SXSW(サウスバイサウスウエスト)という大きなITの祭典があります。そこに出展するのを皮切りに、アメリカでも事業展開する予定です。

【田原】ところで、日本の公教育にこのシステムを導入できないのですか。日本の先生は部活動があったりして忙しい。日本の学校こそ神野さんのところのシステムが役立つと思うけど。

【神野】本当はやりたいです。ただ、日本は予算がなくて。一度お話しさせてもらったことがあるのですが、つけられる予算は1人年間500円と言われました。僕たちのシステムは、少なく見積もっても20倍の予算は必要。アメリカなら年間2万円、北欧ならもっと予算がつくのと比べると、かなり見劣りします。

【田原】日本はどうしてそんなに予算が少ないんだろう。

【神野】文部科学省の方々は、予算をつけることに関してポジティブです。むしろ動かないのは、忙しいはずの現場の先生方。日本の先生方は凝り性というか、自分のやり方を追求している傾向があるので、新しいシステムに対して不信感をお持ちなんですよね。アメリカだと、「授業しなくてよくなるの? ラッキー!」となるのですが、日本人は国民性が真面目なので……。

【田原】なるほど。最後に神野さんの思いをもう一度聞かせてください。

【神野】このまえイギリスが国民投票でEU離脱を決めましたよね。あのとき驚いたのは、離脱決定後にイギリスの検索ワードランキングで、「What is the EU?」が2位になったという事実です。あれだけ世界に衝撃を与えておいて、本人たちはEUが何かわかっていなかったという状況は、さすがに笑えません。世界を良い方向に進めるためには、やはり教育が重要です。今後10年でキュビナを世界に普及させることで、全世界の知の底上げに貢献したいです。

【田原】わかりました。ぜひ頑張ってください。

神野さんから田原さんへの質問

Q. 日本の教育の問題は何ですか?

【田原】僕は数学が嫌いです。小学4年生のときに、円を3等分しろという問題が出ました。手を挙げて「円を細かくちぎって3つに分ければいい」と答えたら、先生から「屁理屈だ」と怒られました。大人になってから数学者の広中平祐さんにそのエピソードを話したら、「そのやり方は微分。数学として正しい」と教えてくれた。つまり僕の解き方もあったのに、学校教育は理想の正解を1つ用意して、そこに子どもたちを当てはめようとしていたわけです。

僕はここに日本の教育の問題があると思う。学校では正解のある問題の解き方ばかりを教えます。しかし世の中は、正解のない問題のほうが圧倒的に多い。正解のない問題にどう対処するのか。さらにいうと、自分でどうやって問題を見つけるのか。そこに焦点を当てる教育をしてほしいと思います。

田原総一朗の遺言:正解のない問題に挑戦せよ!

編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、プリファードネットワークス社長・西川徹氏インタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、9月12日発売の『PRESIDENT10.3号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。
 
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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