話し言葉を印象付けるには

第2のポイントは、話の内容にどうやって説得力を持たせるか。それには話し手の「自信」が伝わることが大事だとドーブは力説する。

ジョン・ドーブ氏

「孫さんのスピーチからは、彼自身の生き方や、扱っている製品に対する強い自信が伝わってきます。聴衆は孫さんを単なるスピーカーではなく『ソフトバンクの象徴』『ビジネスそのもの』と見ています。その人が自信を持っていなければ説得力がありません」

話し方からくる印象もさることながら、Vocabulary(語彙)が豊富であることも「ビジネスへの自信」を強く印象付けるという。

「孫さんは原稿を見ることもせず、自分の言葉でビジネスを細部まで力強く説明します。これは素晴らしい。なかでも驚くのは技術用語の豊富さです。『この人はITの専門家だ』『ビジネスをよく知っている人だ』という印象を与える語彙力です。それによって、聞き手は孫さんがビジネスを人任せにせず、自信を持ち、情熱を傾けて取り組んでいると感じます」

第3のポイントは、強調したい点を際立たせるやり方だ。西任は孫がキーワードを2回、3回と繰り返していることに着目する。

「書き言葉と違って話し言葉は、あっという間に消えてしまいます。ですから、重要なポイントは繰り返し言わなければ相手の記憶に残りません。一度言っただけではだめなのです。1回目は『hear it』、つまり音として聞き取ります。2回目は『listen it』、聞いて内容を理解する。3回目にしてようやく『know it』、腑に落ちるようになるのです。その点、孫さんはスピーチのなかで特定の言葉を何度も繰り返していますね。たとえば『structurally partner』『strong commitment』『fight back』。こういった言葉は、聞き手の印象に残ります」