「やる気」というのは便利な言葉である。多くの上司は、自分の嫌いな部下や成果が出ていない部下を「やる気がない」の一言で片付けているという印象を受ける。アンケートの結果、上司の73・7%が「部下にやる気を感じない」と答えているが、そこで、「やる気とは何か?」「やる気を起こさせるために何をしたか?」と聞いて具体的な答えが返ってくることはほとんどない。

実際、現場で部下にヒアリングすると、仕事に魅力を感じていなかったり、壁にぶつかって辞めたいと思っている人などさまざまなタイプがおり、「やる気がない」と一刀両断にはできない。

今、「やる気」をめぐるマネジメント現場の混乱に輪をかけているのが、上司世代と部下世代の“熱い姿勢”に対するジェネレーションギャップだ。感触としては35~36歳が境になっていると思えるのだが、例えばスポーツドキュメンタリーで一生懸命練習している選手の姿を見て「カッコいいな。頑張ってほしいな」と思うのが上の世代。しかし下の世代はそれをカッコ悪いと感じがちだ。特に20代は「練習は黙ってしろ」とか「そういう姿を見せたら終わり」「黙って結果を出せ」という評価になってしまう。

トップセールスというのは知識と経験、行動量の掛け合わせがマックスを迎える20代後半から30代前半がボリュームゾーンだが、今ちょうどここにあたる世代は熱い姿勢をなかなか表に出さない傾向があることも覚えておくといいだろう。

対処方法

 世代間の違いだけでなく、営業マン個人が、仕事の対価として何を求めているかによってマネジメント手法は異なる。私たちはまず、各営業マンのやる気を喚起する要素を次の5つに分類することから始めている。

(1) 「獲得」……お金や契約などに対する獲得意識が強い。
(2) 「成長」……「自己成長できた」「売れる営業マンになった」「部下が伸びた」など、成長意識がやる気につながる。
(3) 「評価」……「上司の評価」「顧客の評価」など、評価される喜びがモチベーションの源泉になる。
(4) 「征服」……「大きな会社を落とした」「難しい相手を攻略した」など、征服欲を満たすことにやりがいを感じる。
(5) 「責任」……やる気のなかった人が部下を持ったらやる気になるパターン。立場に付随した責任感につき動かされる。

5つの要素のうち、どれを与えればやる気になるのか。もしくは複合的にどの要素を絡めればやる気になるタイプなのか、上司は普段から営業マンの動向に目を配って、やる気の要素を個別に“科学”しなければいけない。