競争原理で選手の力を最大限に引き出す手倉森采配

オリンピックにおけるサッカーの日程は過酷だ。

ワールドカップの場合、グループリーグは中4日ほどの休養が与えられるが、オリンピックでは中2日で試合が行われる。グループB第1戦のナイジェリア戦に引き続き、第2戦のコロンビア戦が行われるブラジル西部マナウスの8月の平均気温は32度。湿度も80%と高温多湿だ。

3戦目のサルバドルの8月の平均気温は26.4度とマナウスよりは涼しいものの、札幌・沖縄間よりも長距離の約2600キロもの移動を強いられる。手倉森誠監督も「世界大会でオリンピックが一番過酷だと思う」と警戒する。

もちろん状況は違うが、オリンピック予選での戦い方が参考になるだろう。

2016年1月に行われたオリンピック予選は、カタール・ドーハにおいて、中2日でグループリーグ、決勝トーナメントを戦う短期集中開催だった。ここで手倉森監督は、ローテーションによる選手起用を断行した。リオへの切符がかかった準決勝、対イラク戦で守備陣の柱である岩波拓也にかえて、奈良竜樹を先発に抜擢。結果、奈良は1次リーグとは見違えるような安定感を見せ、その期待に十分に応えてみせた。

「自分が選んだ武器はすべて使いたい。選手の成長のために」と語る手倉森監督の手腕が発揮され、延長でのイラク戦勝利を呼び込んだ。

コンディションを考えながらベストの選手を使い、経験を積ませ、成長を促す。外された選手の次戦での発奮という副産物も計算づくだ。それにしても、負ければリオ五輪への道が険しくなるという状況の中で、リスクを冒して自らを貫く胆力はさすがというほかない。