アップルが海外で進めている、 iPhoneでお金を払う新しい仕組み「Apple Pay」。一見おサイフケータイと似ているが、日本ではいつ頃使えるようになるのだろうか? 西田宗千佳氏が考察する。

アップルは6月13日に年次開発者会議「WWDC」を開催し、今年秋以降に公開するOSの新バージョンを中心とした、これからの戦略を発表した。ハードウエアの発表がなかったため、日本国内では「今ひとつ面白みに欠けた」との評価が支配的であるようだ。しかし、Mac用の新OS「macOS Sierra」の一機能として紹介されたある機能からは、我々の生活に大きな影響を与える現象の影が見えてくる。もうすぐ我々は、「クレジットカードを使ってサインする」という行為をしなくなる可能性が高いのである。

Web通販で「クレジットカード番号を入力しない」やり方が登場

アップルが進めるモバイル決済サービス「Apple Pay」。ホームボタンの指紋認証機能を用いて、手持ちのクレジットカードによる支払いができるようにする。

アップルが発表したのは「Apple PayでWeb決済も可能にする」ということだった。

Apple Payとは、同社が海外で運営中の、iPhoneを使ったクレジットカードおよびデビットカードでの決済機能である。iPhoneからクレジットカード会社へ利用登録を行うと、対応店舗では、クレジットカードを出さなくても、iPhoneを店頭の端末にかざすだけでカード決済が終わるようになる。日本で普及している「おサイフケータイ」に似ているが、一般的なクレジットカードで決済できること、iPhone専用である2点が大きな違いだ。iPhoneには指紋認証機能の「Touch ID」があるので、仮に自分のiPhoneを盗まれたとしても、指紋認証をパスできない限り、決済の不正利用は難しい。

Apple Payではクレジットカード番号をアップルのサーバーや決済をした店舗に蓄積することをしない。クレジットカードと紐づく情報は自分のiPhoneの中にだけ、厳密な暗号化を行った上で保存し、それを手掛かりにして取引に必要な情報を、取引ごとに「トークナイゼーション」という仕組みで暗号化してやりとりをする。取引に使われる実データにはクレジットカード番号などのセンシティブ情報が含まれてはいないため、データを盗まれても他の取引には使えないし、そこから偽造カードを作られ、詐欺やなりすまし決済が行われる可能性もほとんどない。要は安全になるのである。

このような仕組みを使い、クレジットカードを、より便利に安全に使えるようにするのが「Apple Pay」である。これをアップルは、今後、普通のWeb決済にも拡大する。Macの上でWeb決済を行う際にも、自分のiPhoneと連携して決済をすることで、購入時にクレジットカード情報の入力が不要になる。しかも、自分のiPhoneがなければ決済できないので、なりすまし決済を防止できる。

日本ではまだApple Payが使えないのでピンと来ないが、オンラインショッピングには大きな影響のある新機能といえる。

アップルは6月、Apple Payを今後Web通販でも利用できるようにすると発表した。