都立高の進学実績はなぜ急落したのか

幼稚園から大学までの19年間をすべて公立ですごすと教育費は約1000万円。一方、すべて私立では約2300万~2500万円がかかる(図1)。ブランド力のある学校に通わせたいと考える親は多い。だが、それは意味のあることなのか。

たとえば都立日比谷高校の場合、かつては東京大学への進学実績でダントツだったが、東京都が「学校群制度」を敷き、その制度下での卒業生に切り替わった1971年度以降、上位10校にも入らなくなった。学校群制度は、各校の学力平準化のため、学区内の自由な志望を禁じ、優秀な生徒を複数の学校に振り分けた。日比谷高校は新制度になったからといって、教師が代わったわけではない。つまり進学実績を左右するのは、教師の質ではなく、生徒の質なのだ。私がみるところ、少なくとも東大合格を狙う「SS」ランク校では学校の「教育力」はあまり意味がない。

ただし、早慶クラスを狙う「S~A」ランク校では教育力の効果は小さくない。「尻の叩き方」によって学力が変化するので、スパルタ式の詰め込み教育がうまくいきやすい。

私立のブランド校にはスパルタ式で進学実績を伸ばしているところがある。ただ、こうした「特訓」は真似しやすい。そのため、最近では公立の「S~A」ランク校にも同様の仕組みが広がっている。放課後・土日・春夏冬の休みには有名予備校のカリキュラムで講習を行う。もはや学費の高い私立のブランド校にこだわる必要はないのだ。またスパルタ式の私立校は、企業の採用担当者の評判が悪い。受け身が癖になり、教養や遊びの幅がない。その結果、社会人としての行動力に欠けるからだ。