なぜか「仕事のスタートが早くなる」

ではGTDの手法がどれだけの効果があるのか、実践しているビジネスマンに聞いてみた。本田技術研究所四輪R&Dセンターで四輪車の量産開発のテスト部門を担当する主任研究員の片岡俊介氏(44歳)と部下の大井田淳氏(28歳)の2人だ。

管理職に成り立ての頃は自分の仕事だけではなく、部下の育成と指導も担当し、睡眠時間も急激に減るなど死にそうだったと語る片岡氏がGTDを受講して、最初に気づいたのが、「気になること」の全体把握と「見極めること」の重要性だったと言う。

「書き出すことは、先輩から教えられて少しやっていたのですが、今思うと漠然とした項目を羅列するだけでした。そうではなく、書き出した後に、次にとるべき行動をかみ砕いて書き、本当に一歩を踏み出せる形にすることがとても大事だと教えられたことです。実際に具体的に書き出すだけで頭の中がかなりすっきりしますし、仕事のスタートが早くなりましたね」

片岡氏のツールはレポート用紙とロータスノーツ。今ではレポート用紙に気になることを書き出し、とるべき行動を書き出すことが身についている。

「自分がやらなければいけない全体像が見えるようになる。仕事が忙しくなってもGTDのステップに従って進めるという軸がしっかりしていればこなせるという自信が持てます。『自分のやるべきこと』『誰かに任せること』がはっきりし、私の場合はまず誰かに任せる仕事を一番にやり、次に2分でできる仕事をすませる。その時間は30分もかかりません。それから自分のやるべき事にとりかかります。出社後にノーツを使って毎朝タスクが立ち上がるようにしているので、まず、それを見て確認し、見直すところがあればその作業を行います」

部下の大井田氏は毎朝、自分がやるべきタスクを30~60分かけて書き出すことから始めた。

「まず2分でやるタスクを全部書き、その後に時間がかかる仕事は具体的な行動手順を自分で考えながら書き出していくと30分以上はかかります。同僚の中には書くよりやったほうが早いだろうと言う人がいますが、最初にそれをやれば頭の中がすっきりするのです。後は電話やメールするなど動くだけですから途中で悩むこともありません。ノーツに書き出したタスクが完了すると緑に変わるのですが、全部が緑マークになると、これだけやったという達成感があります」

GTDを知った3年前はやるべき仕事が多くて途方にくれたこともあったという大井田氏だが「手順が習慣化されてからは仕事を回す時間も早くなり、効率的になりました。以前は休憩する余裕もありませんでしたが、今は休憩に出かける回数が増えました(笑)。残業ですか? 業務の性格上基本的に終わりのない仕事ですが、今ではそれを明日やろうと思えば、早く切り上げて帰ることができる余裕ができました」と語る。