土地の境界線は地震でも変わらない!?

今年4月、熊本を中心とした地域を襲った地震で多数の地割れが確認された。土地が横に1メートル以上ズレた箇所もあるという。そこで気になるのが土地の境界だ。地震を機に家を建て直したり土地を売買する人もいるはずだが、もし土地がズレていたら、境界線はどうなるのだろうか。

熊本地震の断層でズレた熊本県・益城町の農地。(写真=朝日新聞社)

法律上、土地の境界は「筆界」と呼ばれる。従来、筆界は判例で「客観的に固有するもの」(最高裁・昭和31年12月18日)、つまり何があっても動かないものとされてきた。たとえば地すべりで土地の形が変わっても、それは土砂が動いただけで、筆界の位置は元のままだ。

しかし、地震で隣近所が丸ごとズレたようなケースもあるのに、筆界は元のままというのは違和感がある。そこで法務省は阪神淡路大震災後、「地震による地殻変動に伴い広範囲にわたって地表面が水平移動した場合には、土地の筆界も相対的に移動したものとして取り扱う」という通達を出した。これに従えば、隣り合う数軒が同じ方向に同じだけスライドしたときは、現状の境界線が新たな筆界になる。筆界は不動という原則に、例外が認められたわけだ。

ただ、この通達でも解決できない問題は残る。たとえば地割れを挟んで両側の土地が逆方向に動いたようなケースだ。この場合、筆界はどのように考えればいいのか。日本土地家屋調査士会連合会理事の土井將照氏は、次のように解説する。

「土地が複雑に移動したときの筆界について、実体法上決まったものはありません。そのためまずは土地の所有者など当事者間で調整を図ります」