スマホしながら、テキトーに子供の話を聞く親

子供の友人関係に気をつけるといっても、実際はなかなか難しい。「○○ちゃんと最近、どういう話をしているの?」と聞いたとしても、まともに答えてもらえるわけはないだろう。自分の子供時代を思い出しても、そういう親の干渉がもっともイヤだった、という読者も多いはずだ。反発されて、考えていることが余計にわからなくなってしまうに違いない。

渡辺さんはポイントを次のように語る。

「大切なのは、普段の何気ない会話のなかで子供が気持ちを吐露した時に、親がきちんと聴いてあげることです。こう言うと当たり前すぎると思うかもしれませんが、これが意外とできていないのです」

きちんと聞くことができていない、とは、どういうことか。

渡辺さんは次のように例をあげる。

(1)子供から話しかけられた時、忙しくて片手間に聞き流す
(2)スマホから目を離さずに(子供のほうを見ないで)話を聞く
(3)「え、それって違うんじゃないの?」と子供の考えにすぐネガティブな判断を下す
(4)「そういうのは時間が解決するのよ」と悩みを軽んじる発言をする

親には悪気はない。だが、こういうどこか鈍感な対応を続けていると、親はわかってくれないと子供は心を閉ざしてしまう、と渡辺さんは話す。

いま「コミュ障(コミュニケーション障害)」などと言って、自分はうまく話すことができないと悩む人が増えているが、この原因も聞き手にあると先生は分析する。

「世の中に話をしっかり聞ける人が少なすぎるのです。どんなに話し方が拙くても、(途中で口をはさまず)しっかり聞いてくれる人がいたら、自分は話が下手だと悩む人は減ると思います。とくに、傷つきやすい思春期の子供の話は、よく聞いてあげることが大切です。親はまず、『そっか、それは気持ちがへこんじゃうね』と気持ちに寄り添ってあげましょう。共感してあげることができれば、『やっぱりお母さんは私のことをわかってくれる』と信頼を寄せてくれるでしょう。思い切ってもっと気持ちを伝えてくれることにもなります」

大切な親友が、深刻に悩んでいる。自分もどうしたらいいかわからない。こんな時、やっぱり頼りになるのは、親だ。

お母さんなら、お父さんなら、どうするだろう?

子供がそう思って相談できる存在でいられれば、心中や自殺は防げたかもしれないのだ。思春期は友達が大切な存在になる年頃とはいえ、親は最後の砦として、子供の一番の理解者でいなくてはならない。