これまで、どんな劣悪な経営状態の企業も立て直してきた稲盛氏の経営テクニックは、一般の家庭にも有効だった！ みるみる家計がよみがえる、簡単なステップを見ていこう。

主婦が好む節約経営が家計をダメにする

稲盛氏は、「企業を永遠に発展させ続けるためにも、常に活性化され、引き締まった肉体にしなくてはならない」として、「筋肉質経営」の大切さを説いています。これは、見栄のためのムダな出費で贅肉をつけたり、短期的な視点から必要経費を削って、ガリガリになったりしてはいけないということです。

家庭を取り仕切る主婦の多くは、節約好きです。おかずを減らして食費を安く上げたり、夫の小遣いを減らしたりして、目先の細かな支出を抑えるのです。「節約のカリスマ」と呼ばれる主婦が、たった10円安いだけのトイレットペーパーを求めて遠くのスーパーに行く姿を、テレビなどで見たことがある人もいるでしょう。しかしながら、これは家族からの不満が出やすい支出の抑え方。小遣いが減れば夫のやる気は損なわれ、医療費を削れば収入を支える自分たちの体をダメにしかねません。近視眼的な節約経営は、家計を不必要にやせ細らせます。

一方で、主婦の多くは知り合いの勧めで高額な保険に加入したり、モデルルームに見惚れて「500万円多く出すだけでこの夜景が手に入るなら……」とマイホームの購入を決断したりします。

10円を気にする人が、よく考えずに500万円高い物を買うのは信じがたいことですが、実感できる金額からかけ離れると人の感覚は麻痺するようです。しかし、家計の支出の大部分を占めるのは、住宅や車のローン、保険などの「固定費」。要するに、多くの家庭では出費を抑えるための「力の入れどころ」を間違えているのです。

家庭で「筋肉質経営」を標榜するのなら、最初に見直すべきは「固定費」です。具体的には、住宅や車のローンを安いものに借り換え、本当に必要な保険だけに絞ります。固定費に関わる契約は、多くの場合夫の名義で行われているため、率先して男性が動きましょう。また、男性は仕事で「相見積もり」をとり慣れているわけですから、固定費につながる決定の前に比較検討する習慣を家庭でも実践すべきです。固定費が削れれば、数万円の得はすぐに生まれます。