営業マネージャーの岡本邦美氏によれば、訪日客の「不安やストレス」を取り除くことを第一に考えるという。

「グループで来られて1人だけ食べるものがない状況は、もし自分がそういう立場になったら、やはり悲しい。自分たちに何ができるかを考え、実行する。現場に権限が与えられています。食後も、お客様が“この後、お酒が飲みたい”と望めば、2軒目にご案内し、一緒におつき合いして、その代金もすべてわれわれの店が持ちます」

来店後のフォローも怠らない。トリップアドバイザーへの書き込みはすべてチェックして返信し、フェイスブック(FB)で「友達」になった顧客には随時メッセージを送る。

「単にお肉を食べていただくのではなく、思い出づくりを支援する。それが日々の目標です」(岡本氏)

秘策2:おもてなしの遊軍部隊がいる

巽氏によれば、訪日客への対応には「3倍の時間」がかかるという。「現場スタッフではすべてに対応できないため、英語の話せるガイド役の社員を3人用意し、営業時間中、フリーに動いてもらう。岡本もその一人です」いわば、おもてなしの遊軍部隊。注目すべきは、異国に来た来店客との間に一種の信頼関係が生まれることだ。同じ遊軍の花岡みどりさんが話す。

「私は入社まもない頃、予約手続きでミスをして、香港から来店されたお客様の席が取れていないことがありました。たまたま別の店に空きがあって、心からお詫びしてそちらにご案内し、お帰りの際、“何かありましたらご連絡ください”と名刺をお渡しした。すると3カ月後、海外のお客様で初めて来店された方が、私の名刺を差し出されたんです。“大阪で困ったら、ここに行けばミドリがちゃんとやってくれる”といわれたそうです。そのお客様は、香港からのお客様のご友人だったのです。信頼していただけたことが本当にうれしかった」