海外、特に欧米の街を訪れてファインダーをのぞき、「おや」と違和感を覚えた経験のある人も多いだろう。その違和感の正体は、電柱・電線である。私たちにとって「地上にあるはず」のものは、世界的に見れば「地中に埋められて当然」のものなのだ。小池百合子氏も「日本の常識は世界の非常識」と断ずる。

小池百合子(こいけ・ゆりこ)
衆議院議員。1952年、兵庫県生まれ。カイロ大学社会学科卒業。アラビア語通訳を務め、『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。その後政界に転身し、環境大臣、女性初の防衛大臣などを歴任。現在「無電柱化小委員会」委員長。著書に『女子の本懐』などがある。

本書では、電柱林立状態の日本の現状と無電柱化への取り組みが、小池氏と社会経済学者・松原隆一郎氏によって語られている。

「日本の春を美しく彩る桜の木は約3500万本と言われています。しかし、それとほぼ同数の3552万本(平成24年)の電柱・電信柱(以下、電柱)が日本中に林立し、景観を乱しています。また、電柱はただでさえ狭い日本の道路で人々の安全な通行を妨げ、災害時には倒壊によって避難や救助の道を塞ぎます。阪神・淡路大震災、東日本大震災を経験し、東京オリンピックを控えた今だからこそ、景観の確保と防災への備え、両方の観点から『無電柱化』を進めるべきなのです」

しかし、日本でもっとも無電柱化が進んでいる東京23区でさえ、無電柱化率は7%。美しい景観を求めて海外から観光客が集まる京都市は2%にとどまる。戦前から無電柱化率100%のロンドン、パリ。ベルリンの99%、ニューヨークの83%などとは比べ物にならない。

「実質的なメリットはもちろん、諸外国では無電柱化が近代化の証とされています。そのため、ソウルは46%、マニラの高級住宅街では40%、台北駅周辺では95%と、GDPでは日本に後れをとるアジアでも無電柱化は進んでいます。世界的に見れば日本だけが『遅れている』のです」

小池氏は10年前に環境大臣として「クールビズ」に取り組み、見事定着させた実績がある。その経験から、無電柱化を進めるためにはまず「意識改革」と「共感」が必要だと説く。

「配電線を地中化するためのコストの高さが、無電柱化がなかなか進まない理由のひとつ。ですが、コスト削減は着実に成果を上げています。やはり、もっとも大きな問題は『電柱が日本の景観を乱し、安全を脅かす存在である』と意識されていないことでしょう。私はビジネスマンからネクタイを引き抜くことに成功しました。次の目標は電柱です」

(邑口京一郎=撮影)
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