――小池さんが「エコだハウス」を建てようとしたきっかけからお話しください

小池 私は03年に環境大臣に就任したこともあり、地球温暖化対策の陣頭指揮をとってきました。エコ問題の多くは、ずばり私たちの生活に起因しています。地球温暖化については、石油・石炭を燃やすことで排出するCO2などの温室効果ガスが主な原因と考えられています。

CO2排出での大きなウェイトは、全体6割を占める産業部門に続いて3部門あります。まず「運輸・交通」、そして第2にオフィスやデパート、病院など「業務」、第3に「家庭」です。

05年から大々的にはじめた「クールビズ」は、この「業務部門」に焦点を絞ると同時に、「家庭部門」への広がりを考えたものです。「産業」と「運輸」は産業、運輸界の努力義務によりCO2削減の方向が見えていましたが、「家庭部門」は一部の人による多少の努力はあっても、一人ひとりの生活そのものです。なかなか方向性が定まりませんでした。

また、日本人はお風呂好きですから、家庭部門の3割を占める給湯が大きいのも特徴です。それからエアコンですね。実は暖房のほうが冷房の3倍もエネルギーがかかります。ここをどう効率化してCO2を減らすかに着目しました。

でも、個々の家電もさることながら、結局は家そのものが問題です。そういうわけでエコハウスに取り組むことに決めました。

環境大臣のときの悔しい思い出もバネになりました。強力な温暖化対策とエネルギー安全保障の観点から太陽光発電を推進していたのですが、05年度を最後に国からの補助金を打ち切られてしまいました。理由は、売電でメリットを得る人を補助するのは税の考え方からして不公平だから、そしてすでに太陽光発電は産業として確立しているからとのことでした。私は温暖化防止からのアプローチでしたので、方向性が違ったのです。

ならば、自分で実験をして、温暖化対策とエネルギー安全保障策としての太陽光発電の有効性を実証してみようと思ったのです。

――いろいろな経緯があったようですが、エネルギー対策はどこに主力をおきましたか

小池 ご記憶かもしれませんが、私は環境大臣の後、防衛大臣を拝命しました。大臣在任中は大臣規範で不動産の売買はできないため、エコハウス建築はさらに先延ばしになり、ここまでくるのに時間がかかりました。その間も、専門家からお話を伺い、いろいろ研究していました。

家庭部門のエネルギー対策やCO2対策を考えるなら、給湯システムの効率化が大事です。給湯システムは、国内では電力会社とガス会社が省エネ技術を競い合っています。電力はエコ給湯、ガスは燃料電池。私は1軒に2世帯分を同時に建てて、比較実験をしたいと試みましたが、さすがにコストがかかりすぎることがわかりました。そこで、まずは1世帯ではじめたのです。

なにごとも自分で体験しなければ、どんな効果が出るかわかりません。まずは自分で人体実験をして、そのうえで人様に伝えられることがあればと思ったのです。

その後、東日本大震災が起こり、原発問題と電力不足が生じるようになりました。特に計画停電などという荒っぽい事態になり、電力一本勝負では危険分散にならないことも実感しました。

これからもキーワードは多様化、ダイバーシティの確保でしょうね。

※プレジデント社の新刊『発電する家「エコだハウス」入門』より転載。

(撮影=奥谷 仁)