―エアムーブ工法とは、具体的にどのような工法なのでしょうか

遠藤(彰・一級建築士) 家屋全体を包むように空気の流れをつくり、「夏涼しく、冬暖かく」が基本です。夏は建物基礎部分の給気口から外の空気を取り入れ、屋根裏からは熱い空気を外に出して、家全体を冷たい空気層で包みます。これで、真夏でもほとんどクーラーなしで快適な環境になります。冬はその逆。床下コンクリートに昼間窓から入る太陽光を蓄熱。床下の暖気は躯体内を循環し、家全体を暖かい空気層で包みます。さらに小池邸は基礎部分の床下コンクリートに5時間通電制御式蓄熱型、つまり深夜電力を使った暖熱方法も併用しています。(詳細は遠藤氏のコラムにて)

―そのほかに小池邸ではどのような点にこだわりましたか

遠藤 調節可能なルーバー(日除け)ですね。エアムーブ工法では太陽の光が大きな役割を果たします。でも真夏は必要のないときもあるので、建物と太陽の調整弁としてルーバーを取り付けました。またこれまでは、開閉時にドアの吊りもとの隙間に指が挟まれるという事故がよく起きていました。そんな事故を防ぐため、本社特許のスマートヒンジというスライドヒンジ方式のものを使って隙間をなくし、不慮の事故が起きないようにしました。ほかには、一般の方でもあまりお金をかけずに居心地良く暮らしていけるよう、雨水タンクなど、できるだけすぐマネができるものを優先して取り入れました。

また、国内林業活性化の意味も込め、群馬県の木材を使用しています。

CO2削減ではエアムーブ工法のほか、暖房熱を逃がさない複層ガラス、エコキュート、それに電気使用量が見える省エネナビ、タイマースイッチも使用しました。もちろん、太陽光発電パネル設置で太陽光を最大限活用しています。将来、ご両親が家のなかで車椅子を使用されるようになっても困らないように、入り口部分はバリアフリーです。居住者がお年を召すにしたがって生活パターンも変わりますから。そのため1階部分は間取りが変えられるよう、工夫しています。

松井社長 これまでも心がけてきたのは、最終的に施主さんから「エアムーブ工法で家を建ててよかったな」と満足していただける家づくりです。今回もそうした家が提供できたのではないかと思っています。

―小池さん、実際住んでみていかがですか

小池 冬は「全館暖房」という感じです。基本的に私はとても寒がりなんです。「クールビズ」を提唱したのも、私自身、エアコンの風が苦手だからという理由がありました。思いっきり寒がりなので、これまでは全面的に暖房に頼ってきました。それでいて暑がりで、夏のクーラーもやめられない。そして、体調を崩す……。本当に悪循環でしたね。ところが「エコだハウス」に住みはじめてからは、エアコンは真冬のうんと寒い日に2~3度つけただけ。エコだハウス全体が、パッシブソーラーの力でポカポカなんです。部屋と部屋との温度差もほとんどありません。夏も楽しみです。

また、給湯システムと冷暖房の工夫で、光熱費が前の家の半分から3分の1に削減できました。床面積と居住者数が倍になったにもかかわらず、です。もちろんCO2削減にも寄与していますよ。そして、何より快適です。

ちなみに3月に約2000円だった電気代の支払いは、4月には売電が買電を越え、約1万円の現金収入を得ることができました。5月には1万4000円の黒字です。まさに「わが家は発電所」なのです。

この家を実験台にして「エコだハウス」を日本中に広め、エネルギーの多様化を体現できればと考えています。広がりのある住宅産業と省エネ技術の合わせ技で、日本の経済活性化とモノづくりへのエールになればいいですね。

競争相手ですか? さしずめ森ビルでしょうか(笑)。

※プレジデント社の新刊『発電する家「エコだハウス」入門』より転載。

(撮影=奥谷 仁)