富裕層は「物欲妻を選ばない」

実は、この本多・安田はいずれも江戸時代末期の農民思想家である二宮尊徳(通称:金次郎)が唱えた「積小為大」(小を積み重ねることで大きな成果を得ること)、「分度生活」を大いに参考にしています。

尊徳は、「世間の人は事をしようとして、小事を怠り、でき難いことに頭を悩ましているが、でき易いことを努めない。それで大きなこともできない。(中略)小事を努めず怠る者が、どうして大事を成し遂げることができよう」(石川佐智子著『世界に誇る日本の道徳力 心に響く二宮尊徳90の名言』より)と、コツコツ勤倹節約で資産を積み上げることを馬鹿にする世間の風潮に手厳しい批判を述べています。

これは江戸時代の話ですが、今の日本でも当てはまる内容かと思います。現代でも、やる人はやっています。

「そういうお前はどうなんだ?」という声が聞こえてきそうですが、僕は以前、「必要最低限の生活費以外の全可処分所得を運用にまわすこと」を富裕層になるために必要な3つの条件の1つとしてあげました(http://president.jp/articles/-/17182?page=3)。じつは、それは本多・安田・二宮の3者の考えに沿った内容だったのです。

僕もこの方針に従って2割から2割5分だけダウングレード(天引き)した生活からスタートするのは大切だと思います。もともとその分は無かったものと計算に入れないでスタートするという話ですので、不可能ではありません。

また、これを僕自身は実行してきました。

とはいっても、僕がフリーターをやっていた頃には、あるトラブルに巻き込まれて1.2億円の借金がありましたので(詳しくは拙著『お金の味』参照ください)、もう少し厳しかったです。

3年だけ経験した株式上場事務のサラリーマン時代の月収は100万円でしたが、そのうち10万円を生活費に、残りを運用の種銭にしていました。10万円では生活ができませんので、これにプラスして妻が働いた10万円の計20万円。肩を寄せ合って生活して切り抜けました。妻は物欲のあるタイプではないので、何も文句は言われませんでした(そういう人じゃないと配偶者として選ばないということですが)。