ただし、通勤に使って利用時間や走行距離数が膨らむと、マイカーのほうが安く済むなど、どちらが有利かは利用形態によって異なる。より重要な点は、実際にこの差をどう捉えるかは価値観次第である、ということだ。

確かに徹頭徹尾、車を移動手段として考えるなら、カーシェアリングのほうが経済効率性は高いだろう。しかし、車を「ステータスシンボル」「非日常空間を満喫するためのツール」として考えるなら、話は変わってくる。そこに移動手段以上の価値を見出した途端、経済効率性など跡形もなく消し飛んでしまう。

依然より少数派になったとはいえ、いまでもアメ車が大好きという人が存在する。「ガソリンをがぶ呑みしてもいい。腹の底に響くエンジン音、欧州車とは違う鷹揚なスタイリングがたまらなくいい」と、GMのトップが聞いたら泣いて喜びそうなことをいう“アメ車ファン”に経済効率性を説いても馬耳東風だろう。

この夏のボーナスが大幅に減額されたこともあり、世の中は「節約志向」一色かのように見える。車もエコカーばかりもてはやされているようだ。しかし。ユーザーのニーズは多様で、どうバランスよくラインアップできるか、自動車メーカーの体力が問われている。

政府は土日祝日だけでなく、お盆休みにも高速料金を1000円で乗り放題にすることを決めた。民主党は恒久的な無料化を訴えている。しかし、私は高速料金の割引や無料化には基本的には反対である。混雑によって配送業者や商用車の移動効率が下がり、社会全体の利益を損なうと考えるからだ。

せちがらい時代だからこそ、大きな視点で世の中を捉えていきたい。

(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成)