2年連続で生産台数は1000万台を超え、過去最高益を更新したトヨタ自動車。絶好調に見える中、社内で着々と進められているのが、大規模な教育改革だ。人材育成を専門にする中原淳東京大学准教授とともに、その現場を取材した。

※前編はこちら(http://president.jp/articles/-/17708)

「育メン部下」問題を全員で討議

訪れたのは愛知県豊田市トヨタ町一番地。会場はピカピカの本社ビルの裏手にあるレトロなビルの一室。やや寒々とした印象の会議室だ。実はこの建物、トヨタ自動車の旧本社社屋だったという由緒正しきビル。今は研修センターとして使われている。

研修は朝8時スタート。12人の受講者は全員40代後半だが、部長や室長、主査といった肩書がついており、まさにトヨタの幹部候補の集まりである。6人ずつが2つのテーブルに分かれて座り、まずはトヨタインスティテュートの担当者から研修の概要についての説明がはじまった。「アドバイザーの皆さまは、名前も顔も知らない基幹職3級(課長級)昇格者の方々に研修を行うことに、不安もおありかと思います。しかし、最前線でご活躍なさっている皆さまから薫陶を受けることは、必ずや学びの多きものになると思います。また、皆さまが身につけたものを社内にヨコテン(横展開)することは、組織力を高めるうえでも大切なことだと考えておりますので、どうぞご協力をお願いいたします」。

この日の研修テーマは「評価者訓練」で、上司が、部下との面談において、どのようなコミュニケーションを行うべきかを学んだうえで、課長級昇格者向けの講師としての「教え方を学ぶ」というもの。朝8時から夜19時まで、講義、グループ討議、ロールプレイなど、1日でくたくたになってしまいそうな量だ。

今回講師を務めるのは、人事部に所属する精神科医。最初は、「コミュニケーションがうまくいっていない職場」の映像を事前に見ておき、どう対応すべきかをディスカッションする「事前課題討議」。討議する内容は定年間際でヤル気のないベテラン社員に職場から不満が噴出しているという設定。「年上部下」問題は、高齢化する日本企業に共通の課題だが、トヨタ社内でも、多くの若手管理職にとって悩みの種になっているという。

続いて、「コミュニケーションと人材育成について」の講義。「共感的に聴き、反応する」といった面談時に必要な心構えやスキル、面談の組み立て方などの基本的な知識を学んだ後は、冒頭でお伝えした「面談ロールプレイ演習」だ。面談の内容は「定年後の再雇用希望者に、評価が基準に満たないため、再雇用できないことを告げる」というシビアなもの。

この高度なコミュニケーションが必要となる面談を、どう組み立てるのか、まずはケースに基づいて個々に面談の準備を行った後、3人1組で別室へ。それぞれ上司役、部下役、観察役に分かれ、観察役は上司役と部下役の2人のロールプレイの様子をiPadで撮影。終了後フィードバックを行い、自身のコミュニケーション上の特徴を知る、という流れだ。

(左)各部署の新任部長級社員12人が集められた。年齢は46~49歳。うち女性は1人。工場の品質管理部の部長やITマネジメント部のグループ長まで所属部署はさまざま。(中央)iPadを用いた模擬面談。「見る・感じる」「聴く・感じる」「伝える・感じさせる」というトヨタの人材育成の原則に沿ってコミュニケーションできるかをチェックしていく。(右)「現象」「問題」「真因」「対策」とトヨタ式問題解決の手法に沿って、ポイントをホワイトボードに書き分けていく。説明をしなくても全員が手法を理解している。