「日本の貯蓄格差は常軌を逸して大きい」
こうした偏りは、表の累積相対度数をグラフにすることで「見える化」されます。横軸に世帯数、縦軸に貯蓄量の累積相対度数をとった座標上に、13の階級をプロットし線でつなぐと、図1のようになります。
きれいな曲線ですね。統計学の素養がある方はお分かりでしょうが、これがいわゆるローレンツ曲線です。ひとまず、貯蓄ローレンツ曲線と名付けましょう。
この曲線の底が深いほど、世帯数と貯蓄量の分布のズレが大きいこと、「溜め」の配分に偏りがあること、すなわち貯蓄格差が大きいことを示唆します。その程度は、色付きの面積で測られます。この面積を2倍した値が、よく知られている「ジニ係数」(編注:収入や貯金・資産の不平等・格差を測るための尺度で、数値が0に近づくほど格差が小さい)です。
貯蓄分布に全く偏りがない場合、ローレンツ曲線は対角線と重なりますので、色付きの面積はゼロ、すなわちジニ係数もゼロになります。逆に極限の不平等状態の場合、色の面積は正方形の半分となりますから、ジニ係数は0.5×2=1.0となる次第です。したがってジニ係数は0.0~1.0の値をとり、現存する不平等(格差)は、この両端の間のどこかに位置します。
図1の色付きの面積は0.307です。よって2013年の日本の貯蓄ジニ係数は、これを2倍して、0.614と算出されます。この値をどう評価するかですが、一般にジニ係数は0.4を超えると高いと判断されます。最近の日本の貯蓄格差は、常軌を逸して大きいといえるでしょう。
なお、今世紀初頭の2001年の貯蓄ジニ係数は0.597でした。わずかですが、貯蓄格差が広がっていることが知られます。