ドローンは日本にとっても重要な産業

――今ではドローンは誰でも手軽に飛ばすことができます。
鈴木真二 一般社団法人日本UAS産業振興協議会理事長 東京大学工学部教授

今話題になっているのはマルチコプターといってプロペラが複数ついていて、飛行機やヘリコプターとは違う原理で飛んでいるのですが、研究者が90年代ぐらいから開発を始めました。2000年代になると、空撮が始まり、携帯電話などで使う軽量で容量のあるリチウムポリマー(電池)というバッテリーの性能が非常に良くなり、電動での操作機能が向上し、その利用の可能性は大きく広がりました。リチウムポリマーが出る前は、電気でラジコンを飛ばすという発想がなかった。ガソリンを入れてエンジンを動かすので、煙がでて、うるさく、しかもメンテナンスが大変だったので誰でも使えるわけではありませんでした。しかし今ではリチウムポリマーが登場して、充電してスイッチを入れていれば誰にでも簡単に使えるようになったので、急速に普及しました。

――ドローンはスマホの進化と連動しているのですか。

そうです。リチウム電池とともに加速度計やジャイロセンサーを搭載しているのですが、iPhoneやiPadに搭載されることで、それら機器のコストが大きく下がりました。

そもそもドローンブームに火をつけたのは、フランスのパロット社からARドローンをiPadで操作できるおもちゃとして発売されたことです。ちょうどiPadが普及しだしたときで、話題になりました。その後、中国製で空撮できるドローンがでてきて、瞬く間に世界中に普及するようになりました。中国のDJI社の空撮用のファントムは10万円ぐらいするのですが、非常にきれいな映像が撮れるころから、人気があります。それがインターネットのYouTubeなどで投稿されるようになり、ソーシャルネットワークの文化とうまく融合し、人気に拍車がかかりました。

――今ドローンの最先端の研究をしている国はどこですか。

米国やフランス、中国などです。しかしドローンのコアな部分には日本の精密機器が使われているので、日本にとっても非常に重要な産業であることはいうまでもありません。しかし日本はまだ大企業があまり関心を示していません。これまでは法律も整備されていなかったので、ドローン利用がいいことなのか、悪いことなのかはっきりしない部分がありました。しかし昨年末に法整備されたことで、これからは合法的に飛ばすことができるようになりますから、大手企業も本格的に参入するのではないかとみています。

――ドローンを飛ばすにはどんな規制があるのですか。

200g以下のドローンは規制の対象外ですが、それ以外はすべて規制の対象です。趣味で飛ばしていた人も、200g以上なら飛ばすときにはきちんと申請を出すことになりました。人口集中地域、一平方キロメートルあたり4000人以上の地域では飛ばすことはできなくなります。東京都では西の山間部以外はすべて該当します。しかも私有地であってもその対象になります。高度150メートル以上はダメ、空港の近くもダメです。飛ばし方にもルールができ、日中で目視できる範囲で飛ばさなければならなくなっています。さらに人や建物に近づいてはダメです。東京都にはドローンを飛ばせる場所はほとんどありませんから、私たちが実験で飛ばすときには栃木県や茨城県、埼玉県、千葉県などの飛行場で飛ばしています。それが法律で決められ、違反すると50万円の罰金が課されます。ただ合法的に飛ばせるようになったので、業務用で飛ばすことが可能になりました。