ドローン(小型無人機)を安全に飛ばして、宅配やインフラ管理などの産業利用につなげようとする取り組みが日本でも活発になってきた。ドローンの技術やルールを研究する一般社団法人日本UAS産業振興協議会の鈴木真二理事長(東京大学工学部教授)に、ドローンビジネスの可能性を聞いた。

いまでは「空飛ぶ無人機」をドローンと呼ぶ

――ドローンが世界中で注目され、日本でも実用化の動きが出てきました。

ドローンは米国などで「空の産業革命」などと呼ばれるように、今まで使っていなかった空域を使うという意味では産業革命の1つだと思います。飛行機は300メートル以上の空域を飛んでいますが、いままで活用されていなかった150メートルまでの空域を活用できるということで、大きな可能性があると思います。

ようやく日本でも昨年、法律が整備され、ドローンが本格的に活用できるようになりました。そういう意味では2015年は日本のドローン元年、そして今年は産業用ドローンが本格的に動き出します。3月24日には日本UAS産業振興協議会主催の「ジャパンドローン2016」という産業用ドローンの展示会や国際コンファレンスが日本で行われます。

――そもそもドローンとはどのようなものなのですか。

ドローンというのは英語で雄蜂のことを指します。もともとは第2次世界大戦前に英国が「クイーンビー」(女王蜂)と名付けて、飛行物を打ち落とす練習のための標的機として趣味などで使われていたラジコン機を使ったのです。その後米国でも同じようなものが作られるようになり、それが「ターゲットドローン」と呼ばれるようになったのです。ドローンは第2次世界大戦中に1万5000機ぐらいつくられて、今でも使われています。日本でも自衛隊がすでにドローンを使っています。

1980年代には偵察機として使われるようになりました。中東の紛争中でイスラエルなどが使用しましたが、当初はラジコン飛行機にカメラを搭載したようなもので、それほど有効なものとはみなされていませんでした。しかしGPSが活用されるようになる90年代に入ると、さらに広い範囲で活用できるようになったのです。95年には東欧州のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争があり、そのときに米国のプレデターというドローンが初めて使われて、GPSを搭載していたので自分でどこまでも追跡ができた。もう1つは衛星を使った動画の圧縮技術が発達したので、動画でもリアルタイムで伝えられるようになったのです。そしてそうした技術が評価され、各国の偵察機として開発が始まったのです。

福島原発のときに米軍が使ったグローバルホークはジェットエンジンを搭載しているので、旅客機と同じような大きさがあり、数百キロの飛行もできます。プレデターはもっと狭く、数十キロぐらいではないでしょうか。最初は偵察機として使われていましたが、今では攻撃用としても使われています。いまでは空飛ぶ無人機がドローンと呼ばれています。

――民生用ではどのように活用されてきたのですか。

最初はアメリカでは農業用として活用する可能性が模索され、数兆円産業の起爆剤として注目されました。日本では農薬散布ヘリが民間で無人機を使いだした最初だったのではないでしょうか。80年代に農水省が中心となり国家プロジェクトとして開発が進み、農薬散布ヘリで行われたものを、ドローンに置き換えることが民間企業で行われました。ヤマハ発動機やヤンマーで開発が進み、いまでは農薬散布は無人機で行われています。2000~2500機が登録され、韓国など海外にも輸出されるようになっています。

日本のように人手が不足している農業はドローンが活躍する場面は多いと思います。例えば狭い農地でも効率的に農薬散布ができます。さらに最近では農作物の生育状況などを監視、把握していく手段として利用することなどが研究されています。これまでマルチスペクトラムの衛星から植物の生育状況などのデータをとっていたのですが、衛星からでは細かい生育状況などのデータが取れないので、ドローンの活躍に注目が集まっています。