印象的なイントロはまさに「編曲家」の腕
序文にはこう記されている。
<編曲とは字のごとく、曲を編んでいく職人のことである。その曲でレコーディングされるすべての楽器のパート譜を書き、時には歌メロよりも印象的なフレーズでメロディを引き立たせる。編曲家とは、アンサンブルのイニシアチブを取り、統率する、いわば楽曲の総合監督である。>
かつて、テレビのクイズ番組で「イントロ当て」が流行ったことがあった。印象的なイントロは、まさに編曲家の腕によるものなのだ。また、大ヒットした曲のサビがまったく違うアレンジだったら、こんなにヒットしたんだろうかと思うこともある。近年、往年のヒット曲のカバーアルバムが持て囃されているが、大胆にアレンジを変えてしまうと、評価が二分されたりする。これがいい例だろう。
本書には、山口百恵の「いい日旅立ち」をアレンジした川口真、バンバンの「『いちご白書』をもう一度」を編曲した瀬尾一三、井上陽水の「氷の世界」を担当した星勝など、日本の音楽シーンに欠くことのできない編曲家たちの名前がズラリと並んでいる。
それぞれが語る名曲のレコーディング秘話は、驚きとともに思わずその歌を口ずさんでしまう楽しさがある。また、野口五郎をはじめ、林哲司、辛島美登里などアーティスト側からのコメントも新鮮なものがある。加えて、数々の楽曲リストなどは、貴重な資料としても活用されることは間違いない。音楽ギョーカイ関係者が、時間をかけて作った労作である。昭和歌謡に心揺さぶられる方、フォーク、ニューミュージックに思い出を持つ人など、懐かしさとともに新たな発見がある、オススメの書だと言えるだろう。