「植物工場」で先を行くオランダやイスラエル
【弘兼】私はオランダで最先端の施設園芸を取材したことがあります。オランダは日本の九州ほどの面積にもかかわらず、農産物の輸出額はアメリカに次いで世界2位。ガラスで建てられた温室は、IT技術を使い、徹底的に管理されていました。そしてワーヘニンゲン大学を中心とする「フードバレー」には、世界中から研究者が集まっていました。
【金丸】オランダだけでなく、イスラエルもITを活用した農業に積極的です。周囲を敵国に囲まれているイスラエルにとって、食糧の確保は安全保障のうえで非常に重要度が高い。現地でもトップクラスのIT技術者が農業に携わっていますね。
IT技術者は農作物の生産には直接関わりませんが、農業者とコラボレーションをしながら、ひとつのチームをつくりあげています。農業を戦略的に成長産業として捉えているから、期待も大きい。一方で、日本の農業はITの導入に消極的でした。農業以外の産業はどんどんハイテク化しているのに、農業は取り残されている。ほかの業界で起きている技術革新やイノベーションをもっと取り入れてほしいですね。
【弘兼】つまりほかの国では、これから農業のハイテク化が加速していくということですよね。
【金丸】ええ。アメリカやカナダ、オーストラリアといった農業国は、耕作地に恵まれていたため、これまで、それほどハイテク化が必要ではありませんでした。しかしこれからはオランダなどの先進事例を参考にしてどんどん進化していくでしょうね。
【弘兼】日本とオランダで「植物工場」を取材した経験からいうと、「これは日本人が得意なジャンルではないか」と思いました。出入り口ではエアカーテンをくぐり抜け、内部はコンピュータで空調管理されている。私は半導体の製造過程のようなイメージを持ったんです。
【金丸】おっしゃる通りです。自動車産業が世界各地に工場を建ててきたように、これからは日本の技術を活かした「植物工場」を輸出することもできるはず。コンテンツが自動車から野菜などに変わるだけの話です。