今回はゲーム理論の「交互ゲーム」を取り上げたい。交互ゲームは将棋や碁のように相手の打った手を見ながら、どの戦略を選ぶかというゲームだ。

次のケースで考えてみよう。「家電メーカーのA社とB社がある。A社は白物家電、B社は音響製品に強みを持つ。ところが最近、A社が収益拡大を狙い、新たに音響関連市場への参入を検討し始めた。実際にA社が参入してきた場合、B社が取る戦略は基本的に2つだ。A社に対し徹底抗戦するか、あるいは融和策を取るかである。B社が徹底抗戦すれば、熾烈な価格競争に陥り、両社ともに50億円の損失が出る。一方、B社が融和を選択すれば、B社はシェアを奪われ30億円の損失が出る。逆に、A社は30億円の利益が生まれる。この場合、A社は音響関連市場に参入すべきか」――。

(構成=田之上 信)