その「適塩サポート」弁当の第一弾が関東地方の店舗に並びはじめたころ、ファミリーマート商品本部では、もう一つのプロジェクトが持ち上がっていた。「ゆるやかな糖質制限」を掲げた、弁当やおむすびの企画である。

「塩分摂取量を控える『適塩』の場合は、医師から指導を受けているなど疾患の自覚がある方が関心を示してくださいました。ただ、当然ですが万人受けするわけではありません。もっと広く一般の方が関心を持ってくださるテーマは何なのか。そう考えたとき思いついたのが、糖質を制限した弁当類です。というのも、最近は糖質量を気にする方が増え、ビール系飲料でも『糖質オフ』や『糖質ゼロ』の商品が人気です。現在疾患があるわけではないけれど、健康を保ちたいというお客様は非常に多い。そうしたニーズにお応えする商品はできないか、というのが開発のきっかけでした」(高倉)

(左から)高倉一真●ファミリーマート商品本部 デリカ食品部 米飯グループ マネジャー、西村裕美子●ファミリーマート商品本部 デリカ食品部 米飯グループ 弁当担当(取材当時)、三木春香●ファミリーマート商品本部 デリカ食品部 米飯グループ おむすび担当

ちょうどそのころ、プレジデント社の雑誌「dancyu」が「dancyuダイエット」というムックを発行し、ゆるやかな糖質制限を志向する多彩なレシピを紹介していた。

食への関心が高い読者層を持つdancyuブランドとのコラボができれば、「健康中食」としてさらに認知度が上がるだろう。そう考えたファミリーマートの提案により、新商品はdancyuとの共同作業で進められることになったのである。

ゆるやかな糖質制限の目安として、dancyuダイエットが提唱しているのは「1食当たりの糖質量20~40グラム」。まず突き当たったのは、この目安をどうクリアするかという問題である。米飯グループで本シリーズ立ち上げの弁当を担当した西村裕美子(現在は調理麺担当)によれば、次のような課題があった。

「白米は糖質量がとても多い食品で、100グラム当たりの糖質量は36.8グラムに達します。ファミリーマートの通常の弁当はその白米を180~200グラム使っていますが、これだと糖質量は白米だけで最低でも66グラムを超えてしまいます。ですからまずは白米の量を減らし、その分を低糖質の食品で置き換えなければなりませんでした」

東京・東池袋のファミリーマート本社にdancyuの担当者を迎え、夏場から繰り返した企画会議では、まず「ごはん部分」をどうするかが大きな議題になった。