リーマン危機では決算発表を前倒し
ソフトバンクは04年に約3400億円で日本テレコムを買収しています。当時は03年度に1098億円、買収後も04年度に719億円と巨額赤字が続いていました。私はたまらず、「これでは自転車操業になります」と噛みつきました。すると、「解消の仕方を教えてやる。もっと勢いよくペダルを漕げばいいんだ」と返ってきた。その後、06年には約2兆円でボーダフォン・ジャパンを買収しています。孫社長の言葉通り、会社一丸となってペダルを漕いだ結果、自転車操業は解消されました。
孫社長の描く未来は、無責任なものではありません。08年のリーマンショックでは、株価が3分の1に下落し、経営危機が取り沙汰されました。決算発表を2週間後に控えていたのですが、孫社長に呼び出され、「決算発表を1週間早めようと思う。業績予想を出す。コミットできる数字を集めてくれ」と言われました。市場の不安に応えるために、いちはやくメッセージを出す。そのコミットを達成できたから、いまのソフトバンクがあるのだと思います。
05年にいったん黒字化したとき、妻に「あなた黒字になったら元気がなくなったんじゃないの」と言われました。いつもバタバタですが、孫社長との仕事は退屈しませんね(笑)。
内藤誼人が分析 心理学的なツボ
【目標設定理論】アメリカの心理学者ロックは、モチベーションの違いは目標設定の違いによってもたらされると論じた。目標が曖昧だと人は力を発揮できない。「会社の完成形を磨く」という方法は具体的で有用だ。
ソフトバンク取締役常務 藤原和彦
1959年生まれ。82年東洋工業(現マツダ)入社。2001年ソフトバンクへ。関連事業室長などを歴任。現在、ソフトバンクモバイル取締役専務兼CFO、ソフトバンクBB取締役専務、ソフトバンクテレコム取締役専務などを兼務。
1959年生まれ。82年東洋工業(現マツダ)入社。2001年ソフトバンクへ。関連事業室長などを歴任。現在、ソフトバンクモバイル取締役専務兼CFO、ソフトバンクBB取締役専務、ソフトバンクテレコム取締役専務などを兼務。
(呉 承鎬=構成 小倉和徳=撮影 時事通信フォト=写真)