数字は説明の道具ではない

定量化の際に欠かせないのが「リアリティチェック」です。あなたの部下がインタビューを定量的に分析し、「商品を一度使った人の6割が継続的に買う」と算出してきたとしましょう。あなたから見るとこの数字は、経験上、明らかに高すぎる。こうした感覚はデータを見ていただけではわかりません。社会常識やビジネス経験から出てくるのです。リアリティチェックの精度を高めるため、他の基準と照らし合わせて比較したり、詳しい人にヒアリングすることも必要です。こうした数字への感覚は経験や練習を積むことで磨かれていきます。

物事を定量化し、分布やスパン、相対化の視点を持ちながら数字を眺め、想像力を働かせてリアリティチェックを行う。そのうえで、次のアクションプランを考える。こうしたプロセスを繰り返すことが大切です。

ただし、数字を単なる説明の道具に使ってはいけません。特に管理職の場合、部門が出した成果の説明が求められるため、安易に説明しやすい数字へ飛びついてしまいがちですが、それでは現実を見誤りアクションを間違えます。そうではなく、数字は考える道具として使う。数字の向こうで起きている現実を見抜く想像力を研ぎ澄まし、過去の経験や常識とは異なる変化を読み取る嗅覚をぜひ磨いてほしいと思います。

▼水越流「数字思考」3つのポイント
1.ヒントは「分布」にあり
2.「絶対値」ではなく「相対値」を
3.数値化しにくい情報も数字に置き換える

ボストン コンサルティング グループ日本代表 水越 豊
1956年、東京都生まれ。79年東京大学経済学部卒業後、新日本製鉄(現新日鉄住金)入社、88年スタンフォード大学経営学修士取得。90年ボストン コンサルティング グループに入社し、2005年より現職。
(宮内 健=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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