職場観察でリーダーの意識改革
まさに、たかが片づけ、されど片づけである。とはいえ、一朝一夕には、これだけの整理・整頓のレベルには達しない。どうしても習慣化が求められる。柴田さんはそれを、マネジャーの役目だと話す。
「単に『やれ!』と言っただけでは人は動きません。片づけのメリット、つまりムダがなくなり、能率が上がることで自分の仕事が早くでき、周囲から評価される。そのことを部下に理解・納得させるのです」
そうした意識改革を促すものに、「職場観察」というユニークな手法がある。最近、柴田さんが自治体での指導でも実践したのだが、各課からリーダーを選び、座学で整理・整頓の必要性を認識してもらったうえで、全職場を見て回るのだ。
自治体の組織は縦割りということもあって、最初は誰も関心を示さなかった。しかし、よその部署を見ると、いいところ、悪いところに自然と目が向く。そして、いい点はその場で声を出して褒め、悪い点はメモにして渡す職場観察を月に1回実施していくと、確実に意識改革が進んだそうだ。
「これが民間企業なら、報奨制度に結びつけるといいでしょう。桃太郎ではありませんが、鬼ヶ島に一緒に行き、鬼を退治してくれたキジ、サル、イヌにきび団子を与えるようなものです。少額でよいので、部門長やトップが賞金や表彰などで報いれば、さらに社員たちは整理・整頓での工夫をするようになるでしょう」
片づけは「整理」「整頓」にとどまらず、「掃除」と「清潔」、そして「躾」を加えた“5S”で語られることが多い。習慣化はまさに躾そのものだ。それだけに、マネジャーの責任は重い。実際、トヨタでは、躾こそが片づけを継続させる根本と考える。
そして、整理・整頓にゴールはない。なぜなら、企業が作る製品、売る商品は常に変わるからだ。当然、その都度、工場ならラインが調整され、店舗やセールスノウハウも見直される。そこでまた、新たな取り組みが始まることになるのだ。