いまやツイッターのフォロワー数33万人。世界陸上のメダリストで、ベストセラー『諦める力』の著者、為末大さんが、世界の問題から身近な問題まで、「納得できない!」「許せない!」「諦められない!」問題に答えます。(お悩みの募集は締め切りました)。
お悩みファイル20■昔の友人に失望。そんな自分にも失望
先日、高校時代のクラスメイトに声をかけ、10人弱で飲み会をしました。20年以上ぶりに会う人もいたので、静かに和やかに旧交を温めたいと思っていたのです。しかし、著名人の知り合いがいるという自慢話を大声で語り続ける者、その場にいる人を無視してスマホをいじり続ける者、飲み会に出席していないクラスメイトと電話で長話をする者が数人いて、正直言って不愉快でした。幹事の私は途中退席をするわけにもいかず、かといって求めていたような雰囲気に変えることもできず……。配慮の足りない参加者への怒りと同時に、大らかな気持ちで飲み会を楽しめない自分への失望も感じています。私はどのように振る舞えばよかったのでしょうか。(男性・会社員、39歳)

この方は同級生に会えるのをとても楽しみにしていたんですね。こういう感覚、わかります。僕も場を盛り上げることについては比較的頑張るタイプですが、この場の盛り上がりは自分にも責任があると思っている人と、まったく自分には責任がないと思っている人に分かれますよね。

これは事前準備に重点を置くか、現場対応に重点を置くかの違いでもあるように思います。アスリートはどちらかといえば現場対応型です。準備も大事ですが、自分の体調にしても天候にしても競争相手にしても、想定通りにいかないことが多いので、臨機応変に目の前のことに対処していかないと勝てません。準備した通りにやったら負けるということだってある。

わが家では僕が現場対応派で妻が事前準備派なのですが、最近、妻も現場対応派にシンパシーを感じるようになってきたらしいです。小さい子どもがいたりすると、日常生活そのもののランダム性がぐんと上がるので、計画通りやるより、目の前で起きていることにまず行動してみようという考え方のほうがうまくいくなという実感が出てきたのかもしれません。

家庭でもオフィスでも、この事前準備派と現場対応派の違いがあるように思います。事前準備派の人は常に「もっとこうしておけばよかった」「どうすればもっとよくなったんだろう」という反省と改善のサイクルを回している一方で、現場対応派は「あれはあれでよかったよね」「ああなったのは仕方ない」と自分を満足あるいは納得させて次に進んでいく。問題は、事前準備派のおかげで助かっていることはたくさんあるのに、彼らの幸せ度は現場対応派にくらべて低いという矛盾が生じることです。

事前準備派が頑張ってくれたおかげで「最悪の結果」が避けられた、たとえば10点満点で1点とか2点になりそうだったところをなんとか7点とか8点くらいまでもっていけた、ということがあったとしましょう。でも準備派は「まあまあよかったな」とは思えなくて「なぜあと2点、3点とれなかったんだろう」というところにこだわってしまう。僕も含めて現場対応派は、もっと意識して日頃から事前準備派に感謝の声をかけるべきなのかもしれません。