4.マイナンバー倒産――社会保険未加入が発覚したら、いくら払わされるか
▼「長期間さかのぼって請求しない」が原則
社会保険には、「雇用保険」「労災保険」「健康保険」「厚生年金保険」の4種類があります。これらは、法人の場合は社長1人の会社でも加入しなければならず、個人事業でも5人以上雇用していれば加入義務があります。ただ、未加入企業が多いのが実情でした。企業は従業員の所得税や住民税の支払いを代行していますから、税務当局の情報と突き合わせれば簡単に未加入が発覚しそうなものですが、これまでは役所間の情報共有に限界があり、それができていなかったのです。
今年2月、厚生労働省が国税庁から情報提供を受けて行った調査で、所得税を社員に代わって納めている企業は全国に約250万社あるのに対して、厚生年金に加入している会社は約170万社(厚生労働省発表。13年末時点)であることがわかりました。この差の約80万社が、従業員を雇用しているが厚生年金を支払っていないと疑われています。
もし自社や取引先の未加入が判明した場合、厚生労働省は「長期間さかのぼって請求しない」のが原則的な立場です。ただし「2年さかのぼって請求される」ケースはあり、最長2年の請求(追徴金)はあるかもしれません。
社会保険料は「標準報酬月額表」に基づいて算出されます。未加入が発覚した会社に、標準報酬月額30万円の従業員が2人いた場合は、およそ400万円(会社負担は半額なので200万円。残りの200万円は従業員本人の負担)を支払わなければなりません。そもそも経営が厳しい零細企業には社会保険料負担は大きいため未加入問題が起きていたのですが、今回は、厚生労働省や国税庁、日本年金機構が主体となって「社会保険への加入指導」を集中的に実施しています。
そのため、今後は零細な取引先が「マイナンバー廃業」を選ぶ可能性はあります。この問題への対処の決め手は残念ながらありません。取引先の危険な兆候に目を光らせて、場合によっては貸し倒れ債権の回収を行うしかないでしょう。